メイドかく語りき
……どうしてそこまでお話なさるのって?
あまりにも衝撃的なものを見ると、どうしても人に云いたくなるものだわ……とても一人じゃ抱えきれないこの情熱……。
ええ、そりゃあお友達も居たわ。でもね、アイリーン。わたくし、本当はアナタのような方が好みなの。
仕方なく男性とお付き合いするフリをしなくてはならないけど、わたくし、アナタの美しさに一目で心を奪われてしまったわ。
ふふ……ねえ、アイリーン、今夜はホントウに暇なのよ……どう?わたくしの部屋に来ませんこと?悪いようにはしないわ……それに、もしかしたら、シャーロック・ホームズのお兄様であるマイクロフト様にちょっとヒトコト申し上げれば……今のお給金よりもさらに色が乗るかもしれなくてよ?
……さあ?お友達は秘密クラブを出てから別れたもの。わたくし彼の食事のお誘いよりも、とにかく瞼の裏にあの光景を焼き付けたくて仕方なかったの……。
……注射?薬を?だから東洋人はあんなに叫んでらしたの?マア……それなら納得だわ……でも、なぜアイリーンがそんな……え……?あなたのお顔?………ア……アアァ……あ、あなたは……まさか……そんな……いえ……そんなまさか……アア……。
あ、あなたは、あなたは。
シャ……シャーロック……ホームズ様……?そんな……だって……だって……。
内偵……?旦那様からの依頼……?そんな……わたくしは決して秘密を漏らすことは……!いいえ!この話はホームズ様にしか……!
本当でございます!嘘は云っておりません!本当です!!信じてくださいませ!!
もう決して喋りません!たった一人の妹のために働かなくてはならないのです!!お願いでございます!どうか旦那様には……!お願いでございます……!
……写真……?陛下の……?イイエ……今夜お忍びでいらっしゃるのは存じておりますが……。
……お願いでございますホームズ様……どうか……どうか……御慈悲を……!
……アア……ありがとうございます……!この御恩は生涯忘れません……!もちろん墓の中まで秘密は持っていきます……!ああ神様……!
……え……それは……ええ……本当でございます……ホームズ様……。
とても。素晴らしかったですわ。ええ。それはもう。
終