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同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語

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 わずか数分間の電車内でのやりとりが終わる頃にはとなり町の駅にまもなく到着する頃だった。那美恵は6人を案内すべく先頭に立って歩く。時間があればのんびり歩いていくことも問題ない距離だが、この日は途中バスを使い、最寄りの停留所で降りて鎮守府までの道のりを徒歩で進んだ。

 13時をすぎて日中まっただ中。湿度は少なく、カラッとした暑さと照りつける太陽の光が一行の体力を奪う。ほぼ無言で歩みを進めていた一行だが、それなりに会話をする。

「そういえばまだ鎮守府に来たことないのって、先生だけなんだっけ?」
 那美恵の何気ない疑問を受けて阿賀奈が答える。
「そうね。私一度も来たことないわ〜。今回が初めてよ!」
「そうですか〜。じゃあぜひのんびり見学していって下さい!」
「そうさせてもらうわ〜。けど夏じゃなければゆっくり見るんだけどね〜。こうも暑いと建物の中入ってゆっくりしたいわ〜。」
「アハハ。じゃあ室内だけでも。」

 ふと、三千花が阿賀奈に尋ねた。
「そういえば、先生って職業艦娘の試験受けに行ってどうなったんですか?合格して艦娘にならないとまずいのでは?」
 三千花の質問に待ってましたとばかりに、阿賀奈は目を輝かせて素早く反応した。
「んふふ〜。よくぞ聞いてくれました!先生ね〜いつ言おうかな〜って思ってたけどタイミング掴めなくてね〜。」
「え?え?え? 先生何に合格したんですかぁ!?」
 先頭を歩いていた那美恵が振り返って阿賀奈に詰め寄って尋ねる。

「聞いて驚かないでよ〜。先生ねぇ……なんと! 軽巡洋艦阿賀野に合格しましたー!」
「「「「「「おぉーー……お!?」」」」」」

 6人ともとりあえず驚いてはみたが、全員?な表情で顔を見合わせる。誰が口火を切ろうか迷っていたところ、6人の心境をズバリ那美恵が口にする。
「先生、その……軽巡洋艦阿賀野ってなんですか?」
「え? え……と。えーと。えーとね? んーーーーー。先生もよくわからないの。」

「わからないんかぃ!」
 先生なのにもかかわらず那美恵は阿賀奈の肩を軽く叩いて鋭いツッコミを入れた。
「一般の人でも知ってそうな艦の艦娘って募集されてなかったんですか?」
 三千花もツッコミを入れる。
「え〜だってだって〜。他の艦娘の募集もあるにはあったの。戦艦っていう艦娘の艤装の試験。でも戦艦ってなんだか怖そうだったしぃ、軽巡洋艦ならなんかふわふわ軽くてなったら楽しそうじゃない?」

「えー……?」
阿賀奈以外全員、呆れたという面持ちで微妙な反応しかできないでいる。当の阿賀奈は生徒の反応なぞ気にせずウィンクをして続けた。
「それに名前もなんだか私の阿賀奈とすっごーく似てるし。それでね、軽巡洋艦阿賀野の試験受けることに決めたの。」
 試験を受けて合格してくれたことは嬉しく思う那美恵たちだが、正直反応に困る艦だった。


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 那美恵達の時代ともなると、第二次大戦などのことは一部を除いてほとんど全く一般人からは忘れ去られている。戦後も110年経つと、国民の意識もその手を狂信する輩も表面上はほとんど一掃されていた。那美恵たちの時代から遡ること40〜50年前のことである。
 それは一部の国が崩壊したり国同士の完全な手打ちが決まったことで、敗戦した国、勝利した国という意識付けから、過去そういう歴史があっただけの普通の国という意識に変わった影響でもあった。領土問題等はあいかわらず残る地域もあったが、それらの一部はその後深海凄艦が現れて甚大な被害を受け、支援した国がかつて自分らが侵略した国だったということで、新たな関係が築かれることになる。
 当時の軍事に関することは、150年以上昔のものとなると機密でもなんでもなく、ただ歴史上ある時点に存在した武器・乗り物にまつわる情報でしかなくなった。かつては軍艦をネタにしたテレビ番組や漫画・ゲームもあったが、時代が中途半場に古くなり、各メディアでもほとんど全く取り上げられなくなった。

 艦娘制度という独自の体制下で軍艦の情報が取り上げられたのは、那美恵たちの時代からさかのぼること20年近く前のことで、世間的には久しぶりとなっていた。化け物に対抗するために特殊な機械を装備して戦う人たち。海で戦うことになる彼ら・彼女らの装備する武装とコードネームとして旧海軍の軍艦・海上自衛隊の護衛艦と同じ流れで名前をつけたのは、艤装の元になった技術Aを研究し、世界に先駆けて人間サイズの艤装を開発して世に送り出した日本の技術者集団だった。彼らのなかに軍事オタクあるいは海自の関係者・研究者がいたのだ。
 そんなごく一部の人たちや、一般人の軍事オタクやゲーム等で知る機会がなければ知らぬ旧海軍の軍艦名を使った艦娘の存在は、この時代の人間にとっては完全に未知の存在であり新鮮そのものだった。


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「ち、ちなみにその戦艦ってなんっていう名前だったんすか?」
「あ!あたしもそれ気になります!」
 三戸が興味ありげに阿賀奈に聞き、流留もそれに乗る。それを受けて阿賀奈は右頬に指を当てて眉をひそめながら必死に思い出し、その名前を口にした。
「確かね、戦艦大和っていうのと、戦艦扶桑っていうの。」


「「ええーーーーー!!?戦艦大和!?」」
 さらりと言い流した阿賀奈の発言を聞き逃さずに取り上げたのは、三戸と流留だ。

「三戸くん。大和って……だよね?」
「うん。あれ。」

 小声でひそひそ話しあった流留と三戸は再び阿賀奈の方を向いて彼女にツッコミをしたのち説明し始めた。
「先生。すっげーもったいないっすよ!艦娘の大和が軍艦のほうと同じかどうかわからないっすけど、元にしてるんなら絶対最強の艦娘でしょ!?」
「そうそう。あたしも三戸くんも艦隊のゲームやったことあって知ってるから言えるけど、大和になってたら間違いなく先生英雄ですよ。ヒーローですよヒーロー!」
「え?そーなの? ……そんなこと言われると先生なんだかもったいないことしたみたいじゃないのぉ……。」

 盛り上がる三戸と流留をよそに那美恵たちはその状況にいまいち乗り切れていない。
「日本史の授業で大和って聞いたことはあるけど、そんなにすごいんだ。へぇ……。」
「なみえすっごく興味なさそうだよね。」
 白けた顔で那美恵は三戸と流留をぼーっと眺めている。そんな親友の隣で同じくいまいち興味なさげな表情で冷静にツッコむ三千花がいる。
「うん。ぶっちゃけ興味なし。」
「ホントにぶっちゃけたわね。まぁ私もあまり興味ないから同じだけど。」

 和子も幸も同様の様子だったようで、無表情になっていた。

 興味ない那美恵だが、艦娘の事情を踏まえてなんとなく思ったことを口にする。
「でもさ、戦艦大和がすごい船だったなら、職業艦娘で戦艦大和もすごそうだよねぇ。」
「そういうものなの?」
 三千花が尋ねた。

「いやわかんないけど。性能がすごいならそんな艤装は燃費もすごそうって話。それに担当する人もめっちゃ高給取りになりそうじゃない? もし先生がそんな艦娘になってたら、維持も大変そうだし、うちの鎮守府の予算使い果たして破産するかも〜。提督ショック死しちゃったりぃ?」