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平野藤四郎は主に冷たい

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まだ一緒にいたい。たくさん話したいことがあるんだ。もう少しだけ、お願い。
「夢だってわかっている。でも夢だけでも平野と一緒にいたい」
上半身を起こそうとすると、平野にそれを遮られる。
目に映るは平野の真剣な顔と後ろに天井。
あぁ、これ押し倒されてる。
「僕だって、男なんですよ…?」
耳元でそう囁かれ、思わず体がビクッとなる。顔に熱があつまっていく。
「あぁ、やっぱ好きだなぁ…」
さっき流しきったと思った涙がまたボロボロ出てくる。
「…あぁ、やっぱり無理です」
さっきの表情とはうってかわって、平野の表情は困った笑顔だ。平野は変わらない、初めて会った日からなんにも。
平野は私を抱きしめる。温かい、なんてつい呑気なことを考えてしまう。
「今からは僕のひとりごとですので、聞き流してください」
「聞き流したりしないよ、平野の話を聞きたい」
「初めて会った日、あなたはまだ僕と同じぐらいの背丈で、よく食べる元気な女の子でした」
「食い意地をはってるってよく言われたよ」
「本当です…。あなたは僕が作った玉子焼きをおいしいって言ってくれた、ありがとう、また作って。って無邪気な笑顔でそういった」
「そんなことあったね、今でもそれは私の好物で、楽しみにしている」
「いつまでもあなたは変わらないって思っていた。でも、あなたはどんどん大きくなっていった」
「うん、私も人間だからね」
「僕は刀です。だから、成長しません。いつしかあなたの誕生日を迎えるのが怖くなってしまった」
「だから、私におめでとうと言わなかったのね」
「あなたに想い人ができました。その時僕はなんとも言えぬ悲壮感と不安と嫉妬に襲われました」
「そっかぁ…」
「その時まではあなたの隣は心地よかった、でもその時からあなたの隣にいると胸が痛くるのです」
「だから近侍を外れたのね」
「僕は、あなたの隣を離れたくなかった。あなたの人生が終わるまで、一緒に笑っていたかった」
「うんうん」
「でも僕はこんな見た目だし、あなたはどんどん成長していくし、あなたの隣はあの男が、僕以外の誰がお似合いだって思った」
「だから主から距離をおこう。この感情は僕が持ってはいけない感情だと、そう思ったのです」
本当は成人式のお姿、とても綺麗でした。
いつも陰ながらあなたのことを見ておりました。
次郎太刀さんや加州さんや乱になにかされてないか、心配で心配でしかたがありませんでした。
あなたの笑顔を見ると心がぽかぽかします。
「お慕いしております主様」
そういって平野は私の唇に自身のそれを重ね合わせた。