彼岸島短文詰め
【セクハラ雅様】
ばか!へんたい!しね!
屋敷の廊下、浴びせられる罵詈雑言にやれやれと雅は頭を振った。
「よくもまあ毎度毎度、同じ言葉の繰り返しであきないものだ」
「お前が同じことをするからだ!」
篤が雅をギッと睨む。例えこの男に下ろうとも、これだけは我慢がならない。
「全く、尻を触られたくらいで。生娘か。…おっと!生娘でないのは私が一番良く知っていたな」
「とりあえず今すぐその口を閉じろ!!」
本気で腕を切り落とすつもりで刀を抜いたが、切っ先は空をかすめたただけだった。
いつのまにか背後をとっていた雅に、腕を捻り上げられる。
「おいおい腕が落ちたんじゃないのか、お前」
「ぐ…」
雅が篤の束ねられた髪を取る。そのままうなじをべろりと雅の舌に舐められて、ぎゃと変な声が漏れた。
「…色気のない声を出すな」
「汚いだろ!」
「……」
無言の雅に脇の部屋へ引きずられて消えて行く篤を遠くから見て、屋敷の使用人達は今日はもう屋敷の修繕箇所が増えることはなさそうだと察するのだった。