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いいこ、わるいこ、すなおなこ。

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 奈緒子が暴力振るってくるタイミングには、大きく4パターンがある。
 ひとつめは、怒っている時。これは説明不要。
 ふたつめは、都合が悪くなった時。ごまかしたり、逃げたり、照れを隠したりするために、権力を振りかざす。これは、高見塚学園生徒会規則第705条の拡張解釈で認められた立派な権利……ということになっている。
 みっつめは、かまってほしい時。……というとかわいく聞こえるけれど、具体例を挙げると、たとえば、俺が奈緒子の呼びかけをわざと無視した時とか。無理やり振り向かせるために行使される。あくまで“たとえ”だけど。

 そしてよっつめは。
「航、わたるぅ」
「なに〜?」
 嬉しい時。その嬉しさを素直に出せなくて、それでも、どこかにぶつけたい時。
「んっふふ〜」
 とことん言葉でなく行動で示すそれは、一見わかりにくいようだけれど、このからくりに気づいてからは、実は、結構わかりやすかったりする。
 そんな複雑で単純な彼女が、いじらしくて、尊くて……つい、
「なに? あんた、まさかサンタさん久しぶりなの? ずっと悪い子してたから?」
 そしてまた要らないことを言って軽く拳を頂戴する、いつものパターン。
「ふんっ」
 ……ちなみに今のは、1と2の複合型。そういうのも、ある。

 ずっとヤな女ぶってた、素直じゃなくて、めんどくさくて、心底愛おしい……すごく優しくて、すごく悪かった子。
「これから奈緒子は毎年いい子だもんな」
「うるさい」
 俺に枕元を預けてくれる限り、
「………………と」
「ん〜?」
「うるさい!」
ずっと、永遠に。

-Fin-