MY IMMORTAL
4.
うねる波が次々に押し寄せる。抗うことも叶わぬまま、荒波に浚われて行く二人。
「はっ・・・!」
篭れ出る吐息を押し隠そうとするシャカの手に指を絡ませて、清廉な処女に快楽という紬糸の毒針を刺すように深く侵入する。
遠く聞こえる潮騒のように緩やかな律動を与えながら。
小さく慄くシャカを全身で感じ取りながら反る首筋に胸元に紅花を咲かす。
「つらい・・か?」
「大・・・丈・・夫だ・・っ」
小さく顔を横に振るシャカの頬に張り付いた髪を指先で梳くとそっと頭を撫でるように抱え込む。それ以上の言葉は交わされることなく、蒼い月の光りが降り注ぐ闇の下で荒い息だけが響いた。
ザァァ・・・・
熱いシャワーを浴びながら、ミロは昨夜の出来事を頭の中で整理していた。
「っつ!」
背中にシャワーをかけると痛みが走った。
「・・・やられた。」
行為の最中にはまったく気付かなかった。痛みよりも快楽のほうが強かったせいだろう。
こんな風に湯がしみるほど爪を立てられてのは、いつ以来だろうか・・・。
ぼうっとまだ眠気が残る頭でそんな他愛無いことを考えた。バスローブを羽織り、タオルでガシガシと髪の水分を拭き取って寝室を覗くとシャカはまだ眠っていた。
そうっと髪を梳いて寝顔を盗み見る。
静かな吐息に安らかな寝顔。安心したように息をついたミロはそっとその場を離れた。
一度、聖域に戻ったミロはアイオリアにシャカの無事を報告するとともにしばらく聖域外で休ませる旨を伝えて、すぐ隠れ家に帰るつもりだった。だが、こういうときに限ってタイミング良く聖域に暴徒が現れた。
結局残務処理やらで3日ほど戻れなかった。苛立ちを抑えながら、何とか戻った先にはシャカの姿はなかった。
「やっぱりな・・・」
恐らくシャカはいないだろう、という確信はあった。それでもどこかで期待していたのだろう・・・。酷く気持ちが沈んでいる己を自嘲した。
テーブルに残されたシャカの置手紙には丁寧な文字で謝辞の言葉が述べられていた。その横には彼に貸したシャツが綺麗に折り畳まれている。
そっとミロは手に取ると顔を埋めた。シャツに残っていたのは仄かに残る洗剤の香りと太陽の匂いしかなかった。
胸の奥底に灯った小さな炎。
ふっと吹き消すようにミロはパタリと扉を閉めると、隠れ家を後にするのだった。
Fin.
作品名:MY IMMORTAL 作家名:千珠