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はろ☆どき
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流れ星をとらえし者 RE【冬コミ91新刊(再録)】

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✶✶✶

   序章




 十四年に一度。
 ペテルギウス座流星群が観測できる年のうちでも、活動が最も活発になるとされていたある日のこと。



 その日は折よく新月だった。
 天文機関の予報どおり、日が落ちて闇が深まるにつれ、西の空から東に向かって光が駆け抜けるように過っていくのを各地で観測することができた。
 アメストリスの東寄りにある高地の一つでも、もちろんその天体ショーは繰り広げられていた。
 さほど大きくはないが深く澄んだ水を湛えた湖。降り注ぐように流れ落ちる星。そして、水底から湧き出でてくるように反射する光。
 それらが水面で合わさっては弾ける様は、天が近いのと相まってなんとも神秘的な光景だった。

 そんな場所で深夜と言える時間になる頃。
 湖畔に黒髪の少年が佇んでいた。
 年の頃は十四、五か。聡明そうな面立ちを晒しながら、無心に空を見上げている。
 少年の瞳は、夜空を映し込んだように深い蒼を含んだ黒色だったが、星の光が映り込んできらきらと輝いていた。
 少年が心に秘めた願いを籠めて、空に向かって手を伸ばすと、一際強い輝きを放った星が一つ、その手に導かれるように降ってきて。
そして少年の目の前で、スーパーノヴァが起きたのかと見紛うような強烈な閃光を散らせて舞い降りた。
 光が徐々に凝縮され自分の身の丈ほどになった頃、少年はようやく眩しさに閉じていた目を開いた。
 光の渦は次第に人の姿を象っていく。
輝きに透けるような四肢。絹のように艶やかで滑らかに波打つ黄金の髪。そして、しっとりと濃厚な蜂蜜色の瞳。
 その蕩けそうな眼差しが少年の視線を捉え、両手をこちらへと差し延べてきた。掌の中には、星のように輝く何かが灯っている。
 少年がそれに触れようとした瞬間――。
 手元から閃光が弾けて、不思議な紋様を描きながら地を走った。そして、二人の周囲を輪で囲うように光の柱が立ち上がる。
 柱は地上の光を吸い上げながら天まで舞い上がり、再び星となって、東の空へと急速に流れ始めた。光の中にあったその人と共に。

――行かないで――

 少年は咄嗟に目の前の手を掴もうとした。
しかし、届くよりも先に金色の指先からみるみると輪郭が薄れてゆき、粒子となって光と共に吸い上げられていった。
 彼方へと見えなくなってしまうまでずっと、その人が何か叫んでいた。
 その声は確かに耳に届いていたはずなのに、何故か少年は記憶に留めることができなかった。
 やがて暗闇が訪れると、少年の手元には結晶のような石が残っていた。
 少年はそれを星の欠片だと思った。彼の残していった一片だと。再び会える証なのだと。

 ――会いたい――

 少年はひた向きに、その想いを掌の中の星に願った。



 その日の夜明けのこと。
 夜中降りしきっていた流星群も、白み始めた東の空へ吸い込まれ、消えていった。
 一つだけ輝きを保った星が、群れから逸れて東部の小さな村へ流れ着き、外れの丘へと降りていった。
 流れ星が宿った丘の上に立つ家で、金髪金眼の子供が健やかな産声をあげた。
 その子供は両親と隣人の祝福を受け、エドワードと名付けられた。