同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語
「そうなんですか。不知火さんのところもあるんですね。お友達は何人艦娘部にいるんですか?」
「…5人です。」
「5人ですか!うちの艦娘部より多いです!うちはあそこでこそこそ話してる那珂こと光主那美恵という人と、ここにいる川内こと内田流留、神通こと神先幸の3人なんですよ。」
不知火は和子から説明返しをされてコクコクと頷いた。
和子は続いて質問する。
「お友達は5人が部にいるんですね。じゃあ艦娘になってるのは何人いるんですか?」
「……私だけです。」
「不知火さんだけですか。不知火さんはこの鎮守府で艦娘になって五月雨ちゃんの次に長いんですよね。その間自分の学校から一人で大変だったのではないですか?」
不知火は無言で頷く。
「そうですよね。不知火さんは普通の艦娘?それとも学生艦娘ですか?」
「はじめは…普通の艦娘でした。」
「私達も会長から艦娘のこと色々聞いてやっとわかってきたんですけど、普通の艦娘だと学校の授業とのやりくり大変ですよね?それで学校と鎮守府の提携を西脇提督にお願いしたんですか?」
和子の一つ一つの質問に答えていく不知火だが、この質問に対しては初めて(本人的には)長々と回答した。
「私は別にそうでもなくて、陽子と雪がずっと学校にお願いしてて、この前司令が来て提携してくれたのです。」
また断片的になってしまっており、なおかつ新たな人物名が出てきたため、和子はそれを一つ一つ噛み砕くように聞き出す。
「えーっと、不知火さん自身はそんなに気にしてなかったですか?」
不知火はコクリと頷く。
「で、その陽子さんと雪さん?というお友達は気にしていたと。まだ艦娘になってないお友達がどうして気にしてたのでしょうか?」
不知火は首を傾げよくわからないという意思表示をした。和子はこの聞き方ではダメだと悟り聞き方を変えた。
「不知火さんは艦娘のお仕事と授業がバッティングしたときはどうしてましたか?」
不知火は目をぱちくりさせ、数秒して答えた。
「志保と…桂子先生に頼みました。」
また新しい人物が出てきた。これは面倒になってきたと和子は内心思ったが口に表情にも出さずに落ち着いて聞き返した。
「お友達と……先生ですね。その二人に代返というんでしょうか。相談したということですか?」
「……はい。話して休ませてもらいました。」
「なるほど。じゃあ先程の陽子さんと雪さんは、不知火さんのことを志保さんと桂子先生から聞いていたから気にして学校提携をお願いしていた、こういう感じでしょうか?」
和子の長めの確認に不知火はまたしても首をかしげるが、何かに気づいたのかわずかにハッとした表情になり(和子と神通しか気づかなかった)、返事をした。
「はい。多分。」
そこまで聞いてやっと和子以外のメンツはハァ…と息を吐き出して感想を言い合った。
「毛内さんすごいなぁ。よく聞きだせるよね。」
三戸が素直に感心する。和子は少しだけ照れて前頭部につけている髪飾り付近を撫でた後答える。
「似た友人そばにいますからね。お手の物です。」
そう言いながらチラリと神通を視線を送る和子。その視線の先に気づいた三戸は
「あぁ〜納得納得。」
とだけ言い、誰が好例だったのかには言及しなかった。
神通は友人の視線には気づかず、不知火に対して感想を口にしていた。
「色々……大変なんですね。艦娘と学校の両立って。不知火さん…偉い。」
不知火は頭をブンブンと思い切り横に振り、そして一言だけ神通に向かって言葉を発した。
「神通さんも、きっとやれます。」
違う学校とはいえ後輩、しかも自分に似た雰囲気の少女に鼓舞されて神通は心の底から嬉しさがこみ上げてくるのを感じた。艦娘になっていなければ自分には話せる後輩なんて絶対できないだろうと思っていた。自分を変えるために艦娘になった効果が、早速あったかもと、心の中でわずかに微笑んだ。
ただ、傍から見ると二人とも黙りこくったまま見つめ合っているようにしか見えない。
この二人、将来的には鎮守府Aで一二を争う、何を考えているのかわかりづらい二人組の誕生であった。
時折口に料理を運びながら聞いていた川内は箸を休めて、同じく感想を口にした。
「なんか面白いね。艦娘って言ってもやっぱ普通の人の集まりなんだな〜って改めて思ったわ。色んな人いて楽しいかも! いつかあたしたちもこうして新しく入る人に話す日が来るのかなぁ〜。ね、さっちゃん?」
神通はコクリと頷き、展望を語る。
「うん。自信持って話せるように……なりたい。」
そう口にした神通の思いは、川内はもちろんのこと、艦娘になってない普通の立場の人間である三戸と和子も通ずるものがあった。三戸は流留を、和子は幸がそうなるよう、陰ながら支援していこうと密かに決意をしていた。
作品名:同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis