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同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語

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 一同が引き続き話そうとしていたその時、神通の顔と表情がこわばっていることに気づいた和子が友人の視線の方向、つまり背後を振り向くと、そこには提督がいた。残りの3人も一斉に振り向いて提督を迎える形になった。

「提督(司令)!」
「や!楽しんでる?」
 提督は紙コップを片手に持ち、もう片方の腕でシュッと前に手首を振る仕草で挨拶をして近づいていた。

「提督、明石さんたちのほうはいいんすか?」と三戸。
「あぁ。あっちはあっちで勝手にやってるよ。それよりも若い子と話したくてね。」
「提督おじさんくさ〜い!」
 川内は軽い口ぶりで茶化す。
「おいおい。まだ俺33だぜ?十分イケてるだろ?」
 提督の口ぶりに川内や三戸は失笑する。本気でからかいの念を含んでいるわけではないのは提督自身にも分かった。
 和子と神通、不知火も一瞬クスッと笑うがその様子を隠し、すぐに提督をフォローする。
「はい、西脇さんはイケてると思いますよ。」
 神通と不知火は和子の言葉にコクコクと頷いて同意する。
「ハハッ。ありがとう。ところで割り込んで申し訳ないんだけど、どんなこと話してたのかな?」
 提督が誰へともなしに聞くと、それには和子が答えた。
「不知火さんの学校とも提携したって聞いたんですけど、それ本当なのでしょうか?」
「あぁ本当だよ。時期的には……そちらの高校に最後にお邪魔した翌週だったかな。ね、不知火。」
 提督の確認に不知火はコクリと頷く。

 提督が最後に和子達の学校に来たのは、学校提携の正式な書面での調印と艦娘部勧誘の展示の記念すべき初日であった。それを思い出した三戸と和子は事情をわかっていたので相槌を打つ。一方で川内と神通はその当時まだ艦娘の"か"の字も触れていない頃だったため、よくわからず口を挟めずにいる。

 それを見た三戸は二人に向かって解説した。
「あのさ、西脇提督がうちの高校に来たのって、うちの高校と正式な提携をした日なんだ。んで、艦娘部の勧誘の展示を始めた日。」
「あっ、そうなんだ。じゃああたしらが知らなくて当然かぁ〜。」
 川内と神通は納得したという様子を見せた。

「でもうちでさえ会長が最初にお話持ちかけてから3ヶ月ほどかかっていたのに、よく急に翌週に不知火さんの中学校にいけましたね?」
 和子が聞くと、提督はその当時のことを思い出しながら語った。
「急でもないんだよ。不知火の中学校とはもともと、五月雨たちの中学校との提携が成った直後に、あちらから話をもちかけられたんだ。」
 和子達4人は黙って提督の話に耳を傾けている。

「当時は俺も鎮守府の責任者になったばかりで色々管理面でまだ勝手がわかっていなかった頃だからさ、五月雨…つまり早川さんたちの中学校でさえやっとこさだったのに、先方から話を持ちかけられて、ある意味手間が省けて楽だ思ったけれど、とても次の提携やよその学校から艦娘を迎え入れる体制を整えられてなくてね。それで止むなく返事を保留にしていたんだ。」

「提督…てか責任者ってのも大変なんっすねぇ……。」
 と三戸は同情にも似た感想を口にする。提督は三戸の言葉にフフッと笑った後説明を再開した。

「当時は五月雨の後に白露型と呼ばれる姉妹艦の艤装が立て続けに配備が予定されていてさ、姉妹艦なら五月雨になった早川さんの学校の生徒さんに着任させてあげたいと思っていたんだ。そうしたらいきなりまったく関係ない型の艤装が配備されたんだ。そこで不知火…智田さんの学校の生徒さんで試しにどなたか試験受けてみませんかと提案したんだ。提携はうちの運用が固まってないから、とりあえず普通の採用でいかがですかってことで。そうしたら、お友達とこぞって試験受けに来た智田さんだけが不知火に合格したというわけさ。」


「へぇ〜それで五月雨さんたち白露型の艦娘の中に一人だけ陽炎型の子がいるんだね〜」
「お?不知火が陽炎型ってことわかってるってことは、川内はもしかして軍艦のこと結構知ってる口かい?」
 川内が現状を確認して述べると、提督は川内の口ぶりに関心を示す。

「あたしだけじゃないですよ。三戸くんも知ってます。二人ともゲームで知ったんですけどね。」
「そうか。その手の知識があるのは助かるよ。」
 川内と三戸の思わぬ知識に感心を示した提督。そして続きを語り出した。

 智田知子が不知火に合格したことで、彼女の中学校は鎮守府との提携に俄然やる気をみせるのだが、提督は運用や交渉の手順がいまだ固まっていないことを理由に彼女の中学校へ提携は保留にさせてくれと再び断っていたのだ。

「……それから7〜8ヶ月経つ間、早川さんの学校から生徒さんを迎え入れて着任してもらえた。そして普通に応募してきた五十鈴…五十嵐凛花さん、妙高になった黒崎さんとわずかだけど中学生以外の人を迎え入れて、俺も艦娘の責任者として運用がわかってきた。そして光主さんが那珂として着任して、今に至ると。」

「で、うちの高校なんすね!?」
 三戸が確認する。

「あぁ。正直言って、光主さんの着任とそちらの高校との提携話はタイミングがよかったんだ。俺も経験積んでようやく鎮守府の管理や艦娘の運用にも慣れてきた。光主さんは那珂としてよく働いてくれるし、アイデアもたくさんくれる。そして彼女は艦娘の活動と普段の生活で問題点と新しい運用の仕方を見出してくれた。」
「新しい運用?」
 三戸と和子、そして川内がハモった。

「三戸君と毛内さんは知ってると思うけど、艤装を鎮守府外に持ち出して同調を試す、このことだよ。」
「あ、なるほど。そういうことっすか。」
「三戸君たち君たちの行動も大変参考になったよ。提携を望む学校側でやる気のある生徒さんがこうして大人がやることを助けてくれるんだって。そして俺も自信がついたって言えばいいのかな。それで不知火と話して、保留にしていた彼女の中学校への返事を復活させて、無事に提携を取り付けたわけさ。実は一番時間がかかってるんだ。」

 提督は照れくさそうに鼻の頭を軽くこすって再び口を開いた。
「俺が自信ついたのは、光主さんがいてくれたからってところかな。突飛な発想でかき乱してくれるときもあるけど、俺や五月雨では思いもつかなかったことを教えてくれる。本当、助かってます。あ、これ、あそこにいる3人には内緒ね?」

 提督は人差し指を口の前に出して内緒の仕草をして三戸たちに念押しをした。三戸たちは深く相槌を打って、目の前のおじさんの密かなお願いに「はい」と小声で答えた。那珂たちはなにやらワイワイキャッキャと話していて夢中のようで提督が三戸や和子、不知火たちと話していることに気づいていないようであった。

「提督、もしかして会長みたいな人がタイプなんっすか?」三戸がにやけ顔で提督に尋ねた。
「な、何を言ってるんだ!違う違うそうじゃないよ。仕事上のベストパートナーっていうのかな?」
「あ〜、提督赤くなってる〜!」
 提督は顔を朱に染めながら平静を装って必死に言い訳をする。ただどう見ても落ち着けていない。それを見て川内が茶々を入れてからかった。
「お、大人をからかうんじゃない!」
「アハッ!提督ってばかわいいー」