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同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語

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 ふと三千花は鎮守府に来る前に那珂が川内と口約束していたことを思い出し、確認してみた。
「なみえさ、そういえばなんか忘れてない?」
「ん?なにが?」
「……忘れてるわね。まぁ私としてはどうでもいいんだけどさ。なみえ、内田さんと約束してたでしょ?」
「約束ぅ? ……あっ!」

 那珂はハッとした表情になった。三千花の指摘通り、すっかり頭の片隅に追いやっていたのだ。
「そうそう。そうだよ。あたしとしたことがぁ〜〜!」
「どうしたの?」
 わざとらしく頭を両手で抱える那珂に五十鈴が質問した。
「着任式が終わったらさ、川内ちゃんと神通ちゃんに記念に艤装フル装備させて同調やらせてあげたいねってこと。ここ来る前に話してたの。」
「へぇ〜。いいじゃない。訓練してないから動けないでしょうけど、いい記念にはなるわね。」
 仔細を聞いた五十鈴は那珂の言に賛同した。

「お〜い!川内ちゃん!神通ちゃぁ〜ん!」
 那珂は先ほどまでいた場所、川内たちが今もおしゃべりしている場所にスタスタ歩きながら声を上げて二人を呼ぶ。


 那珂が自分たちの集まりのすぐ後ろまで近づいてきたので体ごと振り向く川内たち。
「はい。なんですかぁ?」
「あたしすっかり忘れてたよ。二人の艤装フル装備お願いするの。」
 那珂から言われて初めてハッとした表情になる川内。神通は前髪で隠れているが、似た表情をしている。つまり二人とも今の今まで頭の片隅に欠片ほども残っていないほど失念していた事が伺えた。

「あ〜〜あたしも忘れてました。自分でお願いしといてなんですけど。」
「あたしも川内ちゃんもうっかりしてたね〜〜」
アハハと笑い合う那珂と川内。
「じゃあお願いしちゃいましょうよ。」
「うん。そーだね。」
 神通は密かにノリ気ではなかったが、彼女の要望はは乗り気になっている那珂と川内の耳には届かない。川内の賛同を得た那珂は二人でその足で今度は提督のところに行った。
 後ろからは神通がもそっとした仕草でついていった。


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 一方の提督は妙高と大鳥夫人との話が途切れる頃だった。主婦らと合う話題なぞ彼の頭の引き出しにはないので内心焦っていたが、そこに助け舟が来た。
 那珂である。
「提督。ちょっとお願いがあるんだけど、今話せますかー?」
 妙高と大鳥夫人が側にいたため、那珂は普段の軽い調子を少し抑えて淑やかに提督に話しかける。
 少なからず嬉しく思った提督は快く返事をして反応する。
「あぁいいとも。どうしたんだ?」
 提督の座っている椅子のすぐそばに那珂と川内、その後ろには神通が立っている。
「あのね。川内ちゃんと神通ちゃん、今日正式に着任したでしょ。それでね、初日の記念に艤装全部装備して海に出させて欲しいの。どうかな?」

 那珂の提案を聞いて提督は眉間にしわを寄せて表情をこわばらせる。那珂はそれを見てなにかまずいこと言ったのかもと不安を身にまとう。
 提督は川内とその後ろにいる神通をチラリと見て口を開いた。
「それはダメ。二人ともまったく訓練を受けてないからまともに動けないと思うから危ないよ。軽い気持ちでOKを出して初日に大怪我でもされたら、俺は責任者として失格だ。お互いの身を守るためにも、基本訓練をこなすまではダメ。」

「え〜〜!?あたしが監督役で側にいても?」
「ダメ。」
「じゃあ身につけて写真取るだけ。ね?ね?」
「……まぁ、それくらいなら。」
「やった!!!やったよ川内ちゃん!神通ちゃん!」
「やったぁ!」

 提督からしぶしぶの許可をもぎ取ると、那珂は川内と神通の手を取ってブンブンと振って喜びを伝え合う。海に出るのではなく装備をするだけであればと神通もわずかに乗り気になった。
 当事者以外の妙高が不安に感じて提督に尋ねた。
「提督、本当によろしいのですか?」
「まぁ、身に付けるくらいだったら。」
 そう妙高に言い訳的に言い返し、そして川内たちの方に向いて改めて言い渡した。
「でも同調するのもダメだからな。地上で同調してうっかりにでも地面や周りの施設壊したら大事になりかねないからな。」
 提督の許可する範囲は神通は自身の望む範疇の事だったため、僅かに表情を柔らかくして頷いた。

「え〜〜、同調したらいけないのぉ?せっかくスーパーヒロインの川内ちゃんと神通ちゃんを見たかったのにぃ。」
「あたしもスーパーパワー出してるところ見てもらいたかったのに〜〜。」
「そんなの基本訓練した後ならいつでもさせてあげるから。今回はそれで我慢してくれ。」
「「はーーい。」」

 同調すらしてはいけないという提督の許可に不満を持つ那珂と川内だったが、基本訓練とやらをクリアすればいつでもさせてもらえるという言を聞き、おとなしく従うことにした。
 これから始まる夏休み、早めに訓練を終わらせて、川内と神通にガンガン海に出て艦娘になった実感を得てもらおうと密かに頭に思い浮かべる那珂であった。