二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語

INDEX|19ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 


--

 16時すぎ、夕方にさしかかっているとはいえ日差しは強く照りつけ、コンクリートの地面づくしの工廠付近は反射熱で熱が逃げないため、立ち止まっているのはやや危険な暑さであった。そのため一行は明石の案内のもと、工廠の中、空調が効いている一角に集まってそこで待機することにした。

 しばらくして明石が台車で那珂・川内・神通の艤装を運んで持ってきた。
「あれ?3人分ある。あたしのも?」
「そうですよ。だってどうせなら川内型3人揃って装備して撮ってもらったほうがいいでしょ?」
 明石の配慮で川内と神通だけでなく、那珂も艤装をすべて装備することになった。

「せっかくなので五十鈴ちゃんと不知火ちゃんのも出してきましょうか?」
「いいえ。遠慮しておきます。だって、せっかく揃った3人の邪魔をしたくありませんし。」
「私も遠慮しておきます。」
 明石の追加の提案で五十鈴と不知火の艤装も用意されようとしたが、二人はそれを断った。五十鈴はプライベートでは完全に部外者・別の学校の人間であるため、、那珂(実際は川内の思いつきでだが)が望んだ3人揃っての記念撮影、それを邪魔する無粋なことはしたくなかった。不知火も神通たちの晴れ姿を邪魔したくないという思いは一緒だった。

「それじゃあ、3人とも艤装つけちゃいましょう。」
 明石の合図と案内でもって那珂たち三人は工廠の一角で、五十鈴たちや三千花たちが見ている前で艤装を装備し始めた。
 三千花たち高校の生徒会組は那珂が一から艤装を装備するところを見るのはこれで二回目だ。川内と神通が一から装備するのを見るのは全員初めてである。一度フル装備しているとはいえ、那珂と違い二人は明らかに装備の手順を手間取っている。
「那珂さ〜ん、これはどこにつければいいんでしたっけ?」
 川内はやや泣き声で那珂にすがる。一方の神通は黙々と艤装を手に取り撫で回している。彼女は艤装の仕組みを身に付けながら調べているのだ。
「これはね〜ここの留め具を一旦外してからこうやってつけるんだよ〜。ん?神通ちゃんはだいじょぶ?」
「……はい。なんとなくわかりました。」
「おぉ!?さっちゃんよくわかったねぇ!あたしこういうの苦手だわ。プラモとかだったら得意なんだけどなぁ〜」
「……内田さん、落ち着いて。ちゃんと手に取ってこうやって……見ればわかるから。」

 那珂から装備の仕方の手ほどきを受けた川内と神通はあーだこーだと言いながらお互い話し合って艤装を装備を終えた。神通は、川内とはかなり普通に話せるようになっていた。

 数分後、先に装備が終わっていた那珂のあとようやく神通、その次に川内の装備が完了した。今までは制服だけで同じ姿であったが、ここにいるのはフル装備した3人。
 ほぼ同じ姿になった3人を見て、その場にいた誰もが歓声をあげた。それは、今までは那珂だけしか見られなかった、軽巡洋艦の艦娘の中でもっとも軽装なタイプの艦娘であった姿、それが三人キレイに揃っているという不思議な感覚から来るものだった。

「あ…アハハ。二回目だけどなんか感動!同調しないと重いなぁ。三戸くん!早く早く写真撮って!!」
「はいはい。そんな慌てなくても。まずは会長と神先さんと一緒に撮ろうよ。」
「そっか。せっかくの川内型の記念だもんね。」
「そうそう。」
 早る川内の催促をなだめる三戸。3人揃っての撮影がまず最初というのは、那珂や神通、それから三千花たちの意識としても一致していた。

 同調してはダメという提督の言いつけを律儀に守ると、軽巡洋艦艦娘の中では軽装とはいえ、女子高生が身につけるものとしては十分に重量がある川内型の艤装。体力がある那珂や川内はまだましなレベルで動けるが、おとなしくて運動らしい運動が習慣になかった神通は、初めて自分で装備した(装備自体は二度目だが)艤装の驚きの重量に動けず、その場で目を白黒させている。
 その様子を見た那珂はさすがに彼女にはつらいと感じ、監視役の明石に提案する。
「ねぇ明石さん。あたしはまだいいけど、神通ちゃんは相当辛いみたい。一瞬だけ。一瞬だけ同調させてもいい?」
 明石も神通の様子が気になっていたので提督に内緒で同調させるべきかどうか迷っていた。が、那珂からの懇願を受けて押し返しきれずに決断した。
「うーん。提督には内緒ですよ。あの人ああ見えて怒るとめちゃくちゃ怖いですから。特に今回は3人の身を心配して指示したことですから、守らなかったと知られたら……。」
「うん。わかった。川内ちゃんも神通ちゃんも、みっちゃんたちもこのこと内緒ね?」

 各々頷いて意識合わせした。全員から賛同を得られると、那珂は一足先に同調することにした。
「いい、二人とも。同調の仕方はもう大丈夫だよね?艤装を装備してるからっていっても、まったく変わらないよ。ただね、艤装が全体的にエンジンみたいな動作音するからビックリすると思うけど、気にせず同調し続けてね。そんじゃまあ、あたしからいきまーす!」

ドクン


 宣言したあと川内たちから1m弱離れてから、呼吸を整えた後同調した那珂。腰につけたコアユニットが精神状態を感知し、その他の艤装のパーツに同調したという人体の情報を伝達する。
 艤装がかすかに動作音をさせる。
 次の瞬間、光主那美恵は軽巡洋艦艦娘、那珂に完全に切り替わった。

「ふぅ。じゃあ二人とも、やってみて。」
「「は、はい。」」

 顔を見合わせる川内と神通。なんとなしにアハハと笑いを漏らす。とりあえず二人は那珂のしたとおりにすることにした。
 川内は神通から1m弱距離を置く。そこは那珂や明石、三千花たちからも十分離れた場所だ。川内が移動したことで、神通も他のメンツからは十分離れた距離になった。

「それじゃあ、内田流留、行きます!」
 宣言通り先に同調をし始める川内。
 呼吸を落ち着ける。その後川内は同調し始めると、那珂と同じく腰につけたコアユニットがその同調したという情報を感知させる。コアユニットがそれをその他の部位の艤装に伝達し、装着者の精神状態と各部位の艤装がシンクロし始めた。
 次の瞬間、内田流留は完全に軽巡洋艦艦娘、川内に切り替わった。
 それは、光主那美恵がなった川内、中村三千花がなりかけた川内とも異なる、これからの鎮守府Aを担う、本当の艦娘川内だった。

「……ふぅ。あー、動きたい動きたい動きたいー。」
「川内ちゃん。同調したら地上ではむやみに動かないで。ホントに普通の人の数倍以上にパワーアップしてるんだからね!」
 那珂のかなり真面目な質の声が響く。川内は腕を動かしたり足を蹴り出そうとしていたが、その声に驚き、寸前で止まる。
 多分この生徒会長も怒らせるとかなり怖いのではとなんとなく察した。

「はーい。じゃああたしの同調は終わりました。次はさっちゃんね。頑張ってよ!」
「はい……。」
 神通は弱々しく返事をした。