いつか、また会えたら。
例えば、いつかまた生まれ変わって出会えたら、君は俺を好きになってくれるのだろうか。
“いつか、また会えたら。”
青く青く、澄み渡る空。
もし自分が消えるなら、晴れた日がよかった。
「彼」は生きていた。「国」ではなく、「人」でもなく。
「なにか」と聞かれたら「昔、国であったもの」というのが一番ふさわしい。
元、国。プロイセン王国であったギルベルト・バイルシュミットはゆっくりと瞳を開き、それが今日であることに気付いた。
青く、青く、澄み渡る空。
ギルベルトは広がる空を見上げて、「・・・今日か。」とつぶやいた。
もともとプロイセン王国という存在が消滅したときに、「彼」も消滅するはずだった。
しかしなんの因果か「彼」は生き続けた。現在まで。
かたちあるものがいつかは壊れるように、「彼」もまた消滅する運命にあった。
いわば現在の彼は断頭台にのぼりながら、首に刀が振り下ろされるのを待っているような状態である。
そんな宙ぶらりんの中、彼は「生きて」いた。
生きているか死んでいるかと問われたら勿論「生きて」いる。
しかし、在るか無いかと問われたら、彼は「存在して」は、いなかった。
ギルベルトはゆっくりと息を吐き、自分の運命を受け入れることを決めた。
タイムリミットは1日。
その間に、後悔のない人生を、「生きる」ために。
フランシスとアントーニョは連絡したらすぐにつかまった。
二人が暇なのはいつものことだ。
「おーギルちゃんどうしたん?」
「いや、たまには久しぶりに3人で飲むのもいいかと思ってよ。」
「何々、ギルのおごり?」
「それはねーよwちゃんと払えww」
「こんな風に3人で集まるのも久しぶりやんなぁ。」
「・・・ありがとな、お前ら。まじでありがとな。」
「?どうしたのギルwデレ期?デレ期が来たのか?」
「ちげーよ!ほら!飲むぞ!!」
ギルベルトは彼らと過ごす時間を惜しむように、ゆっくりと酒を呑んだ。
すぐに酒がまわって寝てしまった二人を見て、小さくつぶやく。
「Danke schön!」
一緒に飲んで、騒いで、こんなに息が合うやつらには、きっと他にいないだろう。
「どうしたんだ?兄さん。今日はフランシスとアントーニョと飲みに行ったんじゃ・・・。」
「あいつらすぐ酒回って寝ちまってよ!めんどくせーから帰ってきた!」
「後始末くらいしてくればよかったのに・・・。」
「ヴェスト。・・・・いつもそばにいてくれてありがとな。」
「なっ!いきなり何を言ってるんだ!」
「ヴェー!ギルベルト久しぶりー!今日はルートのとこに菊と一緒に遊びに来たんだ~!」
「フェリシアーノちゃん!ハグしていい?」
「どうしたの~?いつもしてるのに。」
「なんか今日はいつもよりハグしたい気分なんだぜ!!」
「えーえへへー変なギルベルト~。ムキムキひゃっほーう!」
「師匠。ご無沙汰しております。今日も変わらずお元気そうでなにより・・・。」
「おう!本田か!」
「・・・師匠。私は子供ではないのですから頭をなでるのはお止めくださいと何度も・・・!」
「さわり心地が俺好みだぜー!」
「聞いてないですね・・・。」
「おうヴェスト、今日は外で食うから夕飯いらねーぞ!フェリちゃんも本田も、ゆっくりしていってな!」
「もちろんであります!」
「お言葉に甘えさせていただきます。」
「兄さん、夕飯食べ終わったら寄り道しないですぐ帰ってくるんだぞ!」
「わかってるって!じゃあな!Danke schön!」
「・・・なんで『ありがとう』なんだ?」
「・・・さあ?」
大好きな家族。大好きな人。大好きな弟子。
そばにいてくれるのが当たり前。
そばにいてくれて、笑ってくれて、ありがとう。
「よぉ坊ちゃん!今日もケーキ作りか?」
「ギルベルト・・・!今できたところですが、食べますか?ザッハトルテです。」
「おお!うまそうだぜ!!」
「きちんと座ってお食べなさい。」
「・・・・エリザは?」
「・・・出かけていますが・・・何か用があるなら、伝えておきましょうか?」
「んー。じゃあ、いつものとこで待ってるからって言っといてくれるか?」
「わかりました。ギルベルト、そんな薄着で大丈夫ですか?夜はまだ寒いんですからマフラーくらいしたほうが・・・。」
「寒くねーよ!大丈夫だって!」
「・・・駄目です。風邪をひいたらルートにも迷惑がかかるでしょう。私のマフラーを貸しますから、今度ちゃんと返しにきてくださいね。」
「・・・わりぃな、坊ちゃん。Danke schön!」
ずっとずっと天敵。
今までも、これからも。
返すあてのないマフラーを巻いて、ギルベルトはあの場所へ向かった。
「ただいま帰りましたー。」
「おやエリザベータ。お帰りなさい。ギルベルトが来ましたよ。『いつものとこで待ってる』だそうです。」
「・・・・ローデリヒさん・・・!」
「行っておあげなさい。行かなければ、一生後悔しますよ。」
「・・・・ありがとうございます、ローデリヒさん!」
エリザベータは荷物を置くと走ってその場所に向かった。
「今日なんですね・・・ギルベルト・・・。」
壁にもたれかかって、ローデリヒは天を仰いだ。
「どうか、神の祝福があらんことを・・・・。」
息を切らして走るエリザベータの瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。
その予兆はあった。いつともしれないその日に、怯えることもなく、「彼」は生きていた。
(あいつが泣いてないのに私が泣くわけにはいかないわ・・・・!)
滲む涙と汗をぬぐって、一心不乱に走る。
「いつものとこ」と呼ばれたそこは、幼少時代にギルベルトとエリザベータが遊んだ場所だった。
青く、青く、澄んだ空。
もし自分が消えるなら、晴れた日がよかった。
限りなく続く大きな青い空を見上げて、ギルベルトはつぶやいた。
「親父。もうすぐ、そっち行くからな。今まで1人にして、ごめんな。」
ぴよぴよと肩にのった小鳥が鳴く。
「小鳥ちゃん・・・今まで一緒にいてくれてありがとな。これからは、俺がいなくても1人で生きていくんだぞ!」
後悔はなかった。
大好きな人たちに囲まれて、笑って、泣いて、毎日を生きてきた。
それは、ギルベルトにとってはもったいないくらいの幸せ。
1つだけ心残りがあるとしたら、それは・・・・・。
「ギル!!!!」
聞きなれた幼馴染の声。
小さなときから大好きな人の声。
「おう!早かったな!」
「走ったもの・・・。」
全速力で走ってきたエリザベータは肩で息をしていた。
「そんなに急がなくてもよかったのによー。」
「ギル・・・・嘘でしょ・・・?」
「嘘ならこんなとこ、来ねーだろ。ほんとだよ。今日、俺は『消滅』する。」
「消滅」という言葉は案外さらりと口からでた。
しかし、それを聞いたエリザベータはガクンとへたりこんでしまった。
「・・・なんで・・・なんで今日なの・・・?」
「さあな。俺にもわかんねーよ。でも、今日なんだ。これは変わらない事実。」
“いつか、また会えたら。”
青く青く、澄み渡る空。
もし自分が消えるなら、晴れた日がよかった。
「彼」は生きていた。「国」ではなく、「人」でもなく。
「なにか」と聞かれたら「昔、国であったもの」というのが一番ふさわしい。
元、国。プロイセン王国であったギルベルト・バイルシュミットはゆっくりと瞳を開き、それが今日であることに気付いた。
青く、青く、澄み渡る空。
ギルベルトは広がる空を見上げて、「・・・今日か。」とつぶやいた。
もともとプロイセン王国という存在が消滅したときに、「彼」も消滅するはずだった。
しかしなんの因果か「彼」は生き続けた。現在まで。
かたちあるものがいつかは壊れるように、「彼」もまた消滅する運命にあった。
いわば現在の彼は断頭台にのぼりながら、首に刀が振り下ろされるのを待っているような状態である。
そんな宙ぶらりんの中、彼は「生きて」いた。
生きているか死んでいるかと問われたら勿論「生きて」いる。
しかし、在るか無いかと問われたら、彼は「存在して」は、いなかった。
ギルベルトはゆっくりと息を吐き、自分の運命を受け入れることを決めた。
タイムリミットは1日。
その間に、後悔のない人生を、「生きる」ために。
フランシスとアントーニョは連絡したらすぐにつかまった。
二人が暇なのはいつものことだ。
「おーギルちゃんどうしたん?」
「いや、たまには久しぶりに3人で飲むのもいいかと思ってよ。」
「何々、ギルのおごり?」
「それはねーよwちゃんと払えww」
「こんな風に3人で集まるのも久しぶりやんなぁ。」
「・・・ありがとな、お前ら。まじでありがとな。」
「?どうしたのギルwデレ期?デレ期が来たのか?」
「ちげーよ!ほら!飲むぞ!!」
ギルベルトは彼らと過ごす時間を惜しむように、ゆっくりと酒を呑んだ。
すぐに酒がまわって寝てしまった二人を見て、小さくつぶやく。
「Danke schön!」
一緒に飲んで、騒いで、こんなに息が合うやつらには、きっと他にいないだろう。
「どうしたんだ?兄さん。今日はフランシスとアントーニョと飲みに行ったんじゃ・・・。」
「あいつらすぐ酒回って寝ちまってよ!めんどくせーから帰ってきた!」
「後始末くらいしてくればよかったのに・・・。」
「ヴェスト。・・・・いつもそばにいてくれてありがとな。」
「なっ!いきなり何を言ってるんだ!」
「ヴェー!ギルベルト久しぶりー!今日はルートのとこに菊と一緒に遊びに来たんだ~!」
「フェリシアーノちゃん!ハグしていい?」
「どうしたの~?いつもしてるのに。」
「なんか今日はいつもよりハグしたい気分なんだぜ!!」
「えーえへへー変なギルベルト~。ムキムキひゃっほーう!」
「師匠。ご無沙汰しております。今日も変わらずお元気そうでなにより・・・。」
「おう!本田か!」
「・・・師匠。私は子供ではないのですから頭をなでるのはお止めくださいと何度も・・・!」
「さわり心地が俺好みだぜー!」
「聞いてないですね・・・。」
「おうヴェスト、今日は外で食うから夕飯いらねーぞ!フェリちゃんも本田も、ゆっくりしていってな!」
「もちろんであります!」
「お言葉に甘えさせていただきます。」
「兄さん、夕飯食べ終わったら寄り道しないですぐ帰ってくるんだぞ!」
「わかってるって!じゃあな!Danke schön!」
「・・・なんで『ありがとう』なんだ?」
「・・・さあ?」
大好きな家族。大好きな人。大好きな弟子。
そばにいてくれるのが当たり前。
そばにいてくれて、笑ってくれて、ありがとう。
「よぉ坊ちゃん!今日もケーキ作りか?」
「ギルベルト・・・!今できたところですが、食べますか?ザッハトルテです。」
「おお!うまそうだぜ!!」
「きちんと座ってお食べなさい。」
「・・・・エリザは?」
「・・・出かけていますが・・・何か用があるなら、伝えておきましょうか?」
「んー。じゃあ、いつものとこで待ってるからって言っといてくれるか?」
「わかりました。ギルベルト、そんな薄着で大丈夫ですか?夜はまだ寒いんですからマフラーくらいしたほうが・・・。」
「寒くねーよ!大丈夫だって!」
「・・・駄目です。風邪をひいたらルートにも迷惑がかかるでしょう。私のマフラーを貸しますから、今度ちゃんと返しにきてくださいね。」
「・・・わりぃな、坊ちゃん。Danke schön!」
ずっとずっと天敵。
今までも、これからも。
返すあてのないマフラーを巻いて、ギルベルトはあの場所へ向かった。
「ただいま帰りましたー。」
「おやエリザベータ。お帰りなさい。ギルベルトが来ましたよ。『いつものとこで待ってる』だそうです。」
「・・・・ローデリヒさん・・・!」
「行っておあげなさい。行かなければ、一生後悔しますよ。」
「・・・・ありがとうございます、ローデリヒさん!」
エリザベータは荷物を置くと走ってその場所に向かった。
「今日なんですね・・・ギルベルト・・・。」
壁にもたれかかって、ローデリヒは天を仰いだ。
「どうか、神の祝福があらんことを・・・・。」
息を切らして走るエリザベータの瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。
その予兆はあった。いつともしれないその日に、怯えることもなく、「彼」は生きていた。
(あいつが泣いてないのに私が泣くわけにはいかないわ・・・・!)
滲む涙と汗をぬぐって、一心不乱に走る。
「いつものとこ」と呼ばれたそこは、幼少時代にギルベルトとエリザベータが遊んだ場所だった。
青く、青く、澄んだ空。
もし自分が消えるなら、晴れた日がよかった。
限りなく続く大きな青い空を見上げて、ギルベルトはつぶやいた。
「親父。もうすぐ、そっち行くからな。今まで1人にして、ごめんな。」
ぴよぴよと肩にのった小鳥が鳴く。
「小鳥ちゃん・・・今まで一緒にいてくれてありがとな。これからは、俺がいなくても1人で生きていくんだぞ!」
後悔はなかった。
大好きな人たちに囲まれて、笑って、泣いて、毎日を生きてきた。
それは、ギルベルトにとってはもったいないくらいの幸せ。
1つだけ心残りがあるとしたら、それは・・・・・。
「ギル!!!!」
聞きなれた幼馴染の声。
小さなときから大好きな人の声。
「おう!早かったな!」
「走ったもの・・・。」
全速力で走ってきたエリザベータは肩で息をしていた。
「そんなに急がなくてもよかったのによー。」
「ギル・・・・嘘でしょ・・・?」
「嘘ならこんなとこ、来ねーだろ。ほんとだよ。今日、俺は『消滅』する。」
「消滅」という言葉は案外さらりと口からでた。
しかし、それを聞いたエリザベータはガクンとへたりこんでしまった。
「・・・なんで・・・なんで今日なの・・・?」
「さあな。俺にもわかんねーよ。でも、今日なんだ。これは変わらない事実。」
作品名:いつか、また会えたら。 作家名:ずーか