スイートギフト
「これ買ってきたの?」
その日の就寝前、ランプの下ではヘクトールがファングが今日武器屋で買ってきたものを改めていた。こうしてチェックしないと、ファングはたまに気に入ったという理由で変なものを買ってきてしまうのだ。
「もー。言ったでしょ、パーティの資金で買い物をする時は事前に皆に相談しないとダメだよファング」
ファングはすでにベットの中にいて、背中を向けて寝ている。
「うるさい。何を買おうと俺様の勝手だ」
「ん?これも買ったの?」
ヘクトールは買った品の中に、小さな木箱を見つけた。開くと中にブレスレットが納められている。
「女性専用のアクセサリーだよね、これ」
宝石が付いていて細工も美しいが、防御効果も低く特殊効果も付いていない、防具としてより装飾品として身につける類の品だ。
「綺麗だけど役に立たないし。ねえこんなの買ってきてどうするの」
「安かったから買っただけだ。それに買ったのは俺個人の所持金だほっとけ!」
「何それ。あ、もしかして!誰かに…」
鋭く枕が飛んできて、へクトールの頭に思い切り当たった。
「お前さっさと寝ろ。遅れたら置いてくぞ」
「いっつも最後に起きてくるのはファングじゃないかぁ~」
ぶつぶつ文句を言いているヘクトールの耳に、ぼそっとひとり言のような小さな呟きが入った。
「…別にただの礼だ」
「え?何て?」
うるさい!ともう一度言ってファングは頭からシーツを被ってしまったから、木箱だけをそっとベットサイドのテーブルに移してヘクトールも寝る準備を始めた。