艦隊これくしょん―艦これ― 第2艦隊健在なり
艦隊これくしょん―艦これ― 第2艦隊健在なり
第1章
人類は今、新たな脅威に襲われていた。
21世紀初頭、人類は突如として深海からやって来た悪魔「深海棲艦」に襲われた。太平洋中心部から現れた彼らは、手初めに太平洋上を航行する船舶を次々と撃沈。多くの罪のない船員が犠牲となる。
アメリカ海軍は一連の沈没事件を深海棲艦のものと特定すると、アメリカ海軍第7艦隊を派遣する。しかし、彼らの性能の高さにより、第7艦隊は猛烈な攻撃に遭い、戦力の9割を損耗。この事態を重く見たアメリカ合衆国は、アメリカを筆頭として、日本、オーストラリア、中国、ロシア、韓国の多国籍艦隊を編成。深海棲艦に総攻撃を仕掛けるが彼らの戦闘力の前に甚大な被害を被り、多国籍艦隊は崩壊した。
太平洋を掌握した彼らは、太平洋上の沿岸に侵攻。ハワイ、オーストラリア、フィリピン、インドネシアは完全に海を封鎖され、沿岸の街、港は沿岸砲撃によって完膚なきまでに叩き潰される。
戦力を多数損耗した海上自衛隊は必死に深海棲艦に対して抵抗するも、徐々に日本本土へと押しやられ、日本沿岸も深海棲艦の襲撃によって被害を受けていた。
だが、1つの出来事がこの事態を変えた。深海棲艦が現れた半年後、今度はある女性が日本近海で保護される。彼女は太平洋戦争で沈んだ艦船の魂を持つ「艦娘」であった。彼女は保護時に武装を持っており、それは多国籍軍では倒せなかった深海棲艦を葬り去る事ができる事がわかった。
また、彼女が発見されて以降、彼女がともに連れていた「妖精」と呼んでいる謎の小さい生物たちのおかげで、かなり限定的ではあるが、艦娘を「建造」できるようになる。しかし、妖精を見ることができるのは艦娘と運の良い人間だけであり、自衛隊内に妖精を見ることのできる適任者は1名のみであった。
このような特殊性から、海上自衛隊は艦娘を通常部隊と分け、新たに下部組織である「日本海軍」を設立するに至る。本部は横須賀市の千代ケ崎に建てられ、旧帝国海軍の呼び方である「鎮守府」が用いられた。この話は、鎮守府設立からさらに2カ月後の横須賀鎮守府の話である。
「本日付で横須賀鎮守府に配属されました寺西少佐です。今後ともよろしくお願いします」
「横須賀鎮守府司令長官兼、第1艦隊司令長官をやっている富山少将だ。こちらこそよろしく頼む」
2人の男はがっちりと固い握手を交わす。
「いや、久しぶりだな。あれからもう2カ月か」
「ええ、そうですね。またお会いできて光栄です」
寺西と名乗った男は、160後半くらいの身長で、線が細く、銀縁のメガネをかけている。顔も細めであるが、温厚さを感じられる表情をしている。一方、富山と名乗った男は、肩幅が広く、体つきもがっしりとしていて、服の上からでも彼の肉体が鍛え上げられていることがわかる。身長は寺西よりさらに大きく、180に少し届かないくらいの高さがあった。体同様、顔全体はがっしりとした形になっているが、表情が柔らかいからか、威圧感を感じさせない。
部屋の中は木製のミーティングテーブルが中心にあって、黒いソファが2対、机を挟む形で置かれている。机の上には、普通の文房具屋では売っていないような、立派な黒塗りのペンが立てられていた。内装はかなり豪華なものになっており、細かい装飾が縫われた赤い絨毯や小ぶりなシャンデリアが置いてある。外の気温がだいぶ上がっているためか、部屋のカーテンは締め切られ、天井に埋め込まれたクーラーが稼働していた。寺西はこの部屋を見渡すと少し落ち着かない様子でそわそわした。そんな様子を気にして、富山が声をかける。
「ここは応接間だ。仕事の関係上、国や自衛隊のお偉いさんが来ることは何度かあるから、こういったちょっと出迎えるための部屋が必要なのさ。先に言っとくと、他の部屋はもっと落ち着いてるからな」
寺西はその話を聞いて胸を撫で下ろした。
「早速、海自で2カ月の研修を受けてきたようだが、どうだった?」
「いや、採用当初は全く運動をしていなかったので、なかなかハードな研修になりました」
寺西少佐は前までは、高校の数学の教員として働いていた。しかし、自衛隊が妖精を見ることができる人材を確保するために、イベントを装って集まった人を調査したところ、彼1人が妖精を見る事ができることが確認され、海上自衛隊にスカウトされたのである。そして、2カ月間の基本的な軍事訓練と艦娘の運用に関する研修を受け、日本海軍へと配属されることとなった。
「そうか、それは大変だったな。まあ、これでもう少佐は俺の部下だ。俺は民間から引きぬかれた少佐とは違って元自衛官なんだが、固いのが苦手なんだ。だからこれからは、遠慮しないで俺に接してくれ」
第1章
人類は今、新たな脅威に襲われていた。
21世紀初頭、人類は突如として深海からやって来た悪魔「深海棲艦」に襲われた。太平洋中心部から現れた彼らは、手初めに太平洋上を航行する船舶を次々と撃沈。多くの罪のない船員が犠牲となる。
アメリカ海軍は一連の沈没事件を深海棲艦のものと特定すると、アメリカ海軍第7艦隊を派遣する。しかし、彼らの性能の高さにより、第7艦隊は猛烈な攻撃に遭い、戦力の9割を損耗。この事態を重く見たアメリカ合衆国は、アメリカを筆頭として、日本、オーストラリア、中国、ロシア、韓国の多国籍艦隊を編成。深海棲艦に総攻撃を仕掛けるが彼らの戦闘力の前に甚大な被害を被り、多国籍艦隊は崩壊した。
太平洋を掌握した彼らは、太平洋上の沿岸に侵攻。ハワイ、オーストラリア、フィリピン、インドネシアは完全に海を封鎖され、沿岸の街、港は沿岸砲撃によって完膚なきまでに叩き潰される。
戦力を多数損耗した海上自衛隊は必死に深海棲艦に対して抵抗するも、徐々に日本本土へと押しやられ、日本沿岸も深海棲艦の襲撃によって被害を受けていた。
だが、1つの出来事がこの事態を変えた。深海棲艦が現れた半年後、今度はある女性が日本近海で保護される。彼女は太平洋戦争で沈んだ艦船の魂を持つ「艦娘」であった。彼女は保護時に武装を持っており、それは多国籍軍では倒せなかった深海棲艦を葬り去る事ができる事がわかった。
また、彼女が発見されて以降、彼女がともに連れていた「妖精」と呼んでいる謎の小さい生物たちのおかげで、かなり限定的ではあるが、艦娘を「建造」できるようになる。しかし、妖精を見ることができるのは艦娘と運の良い人間だけであり、自衛隊内に妖精を見ることのできる適任者は1名のみであった。
このような特殊性から、海上自衛隊は艦娘を通常部隊と分け、新たに下部組織である「日本海軍」を設立するに至る。本部は横須賀市の千代ケ崎に建てられ、旧帝国海軍の呼び方である「鎮守府」が用いられた。この話は、鎮守府設立からさらに2カ月後の横須賀鎮守府の話である。
「本日付で横須賀鎮守府に配属されました寺西少佐です。今後ともよろしくお願いします」
「横須賀鎮守府司令長官兼、第1艦隊司令長官をやっている富山少将だ。こちらこそよろしく頼む」
2人の男はがっちりと固い握手を交わす。
「いや、久しぶりだな。あれからもう2カ月か」
「ええ、そうですね。またお会いできて光栄です」
寺西と名乗った男は、160後半くらいの身長で、線が細く、銀縁のメガネをかけている。顔も細めであるが、温厚さを感じられる表情をしている。一方、富山と名乗った男は、肩幅が広く、体つきもがっしりとしていて、服の上からでも彼の肉体が鍛え上げられていることがわかる。身長は寺西よりさらに大きく、180に少し届かないくらいの高さがあった。体同様、顔全体はがっしりとした形になっているが、表情が柔らかいからか、威圧感を感じさせない。
部屋の中は木製のミーティングテーブルが中心にあって、黒いソファが2対、机を挟む形で置かれている。机の上には、普通の文房具屋では売っていないような、立派な黒塗りのペンが立てられていた。内装はかなり豪華なものになっており、細かい装飾が縫われた赤い絨毯や小ぶりなシャンデリアが置いてある。外の気温がだいぶ上がっているためか、部屋のカーテンは締め切られ、天井に埋め込まれたクーラーが稼働していた。寺西はこの部屋を見渡すと少し落ち着かない様子でそわそわした。そんな様子を気にして、富山が声をかける。
「ここは応接間だ。仕事の関係上、国や自衛隊のお偉いさんが来ることは何度かあるから、こういったちょっと出迎えるための部屋が必要なのさ。先に言っとくと、他の部屋はもっと落ち着いてるからな」
寺西はその話を聞いて胸を撫で下ろした。
「早速、海自で2カ月の研修を受けてきたようだが、どうだった?」
「いや、採用当初は全く運動をしていなかったので、なかなかハードな研修になりました」
寺西少佐は前までは、高校の数学の教員として働いていた。しかし、自衛隊が妖精を見ることができる人材を確保するために、イベントを装って集まった人を調査したところ、彼1人が妖精を見る事ができることが確認され、海上自衛隊にスカウトされたのである。そして、2カ月間の基本的な軍事訓練と艦娘の運用に関する研修を受け、日本海軍へと配属されることとなった。
「そうか、それは大変だったな。まあ、これでもう少佐は俺の部下だ。俺は民間から引きぬかれた少佐とは違って元自衛官なんだが、固いのが苦手なんだ。だからこれからは、遠慮しないで俺に接してくれ」
作品名:艦隊これくしょん―艦これ― 第2艦隊健在なり 作家名:瀬戸信浩