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艦隊これくしょん―艦これ― 第2艦隊健在なり

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 富山少将は、以前は海上自衛隊で護衛艦の航海長をしていた。しかし、艦娘が回収され、彼に妖精を見る適性があることがわかると、艦娘の管理を任されるようになり、現在に至る。ちなみに、彼は海上自衛官時代は3等海佐であったが、艦娘部隊を統べる必要性から、日本海軍に異動後は少将へと昇格している。
「わ、わかりました」
「さて、最初にいろいろとやってもらいたいことがあるんだが……とりあえずソファに座ってくれ。立ちながら説明するわけにもいかないしな」
「では、失礼して」
「さて、本題だが」
 そう言うと、富山は1枚の紙と厚い資料を何冊かテーブルの上に並べて置き、一つづつ資料を確認していく。
「この1枚の紙が日本海軍に所属するための宣誓書だ。内容を読んで、今サインしてくれ。次にこの冊子は、俺がまとめたこれからの仕事の流れだ。あくまで予定ではあるから状況によっては変わるだろうが、とりあえずの仕事はこの冊子を読んでくれれば大丈夫だ。あと、こっちにある何冊かは日本海軍、深海棲艦、艦娘についてまとめられた資料だ。言うまでもないが、この資料の90パーセント位が”軍事機密”……つまり、一般には公開できない内容になってる。それだけは心してくれ」
 寺西が資料に目を落とすと、資料の表紙には「秘文書」と書かれているのが目に入った。
「はい、わかりました」
 寺西は深く頷くと、もらった資料をまとめて揃えた。その時、コンコンという音が木製のドア越しに聞こえる。
「失礼します」
 入ってきたのは、ぱっちりとした目をしてメガネを掛けた、真面目そうな女性だった。寺西は彼女の登場に面食らう。なんと彼女はセーラー服を身につけた、女子高校生としか思えない見た目をしていたからだ。なぜこんな年頃の娘が鎮守府にいるのか、彼の頭はもうその疑問でいっぱいいっぱいになってしまった。
「お、ありがとうな大淀。わざわざアイスティーなんて入れてもらっちゃって」
「何を言ってるんですか提督。せっかく新しい方がいらしたんですから、しっかりおもてなししないと」
 大淀と呼ばれた彼女は、いくつかのガムシロップが入った小さいかごとミルクの入った手のひらサイズのステンレスピッチャー、そしてアイスティーの入ったグラス2つを机に置いて、こちらに向いた。寺西もつられて席を立つ。
「大淀です。これからよろしくお願いしますね」
「は、はい。今日から着任した寺西です。こちらこそよろしくお願いします」
 そう言って大淀はにこりとした後、部屋を出て行き、パタリとドアを閉じる。
「さて、飲みながら質疑応答といこうか」
 いつの間にか富山は、アイスティーを飲みながらくつろぎ始めている。
「えっと、そうですね……先ほどの、大淀さんはいわゆる艦娘ですか」
「ああそうだ。彼女は軽巡洋艦大淀。指揮能力に優れていて、今では艦隊旗艦を任せている」
「そうですか。艦娘の存在は自衛隊での研修中に教えていただいたんですが、あそこまで若いとは思いませんでした。勝手に女性自衛官と同じくらいかと」
「そうかぁ……そうだよな、普通はそう考えるか。今、ここに所属している艦娘は、学生くらいの見た目の艦娘ばかりだ。でも彼女らは艦娘であって、人間とは違うんだ。見た目より中身はしっかりしているから、安心してくれ」
「そういうものですか……分かりました」
「今は困惑するだろうが、すぐ慣れるさ。これからいろいろな仕事をこなしてもらうから、そのうちに慣れてもらえると嬉しい」
「了解です」
 寺西がふとグラスに視線を落とすと、アイスティーの量は全くといって減っていなかった。緊張で手を付ける余裕が彼にはなかった。
「紅茶は苦手だったか?」
「いや! そういう訳では」
 寺西は慌ててグラスに口をつけ、緊張で高鳴る心臓を落ち着かせる。
「そういえば、今日は私は何をすれば良いですか?」
 富山の眉はふっと上がり、軽い調子で話し始めた。
「ああ、それについてなら質問が終わった後で良いかと思ってたんだが、まあいいか」