Lovin' you 6
そのシャトルにはブライト・ノア艦長の息子ハサウェイと連邦の高官アデナウアーとその娘クエスも同乗していた。
ーーーそして、戦闘に巻き込まれたシャトルはラー・カイラムに救出される事となる。
救出されたシャトルの乗客達がラー・カイラムのフリースペースへと案内される。
ブライトと元アーガマのパイロット、ジュドー・アーシタが対応の為乗客達の元へ行くと、ブライトの息子、ハサウェイがブライトへと駆け寄る。
「父さん!」
「ハサウェイ!お前も乗ってたのか?母さんやチェーミンは?」
「母さん達のチケットは手に入らなかったんだ。僕だけ運良くシャトルに乗れて…」
「そうか!」
ブライトは久しぶりに会う愛息子を抱きしめる。すると、ハサウェイの後ろからちょこんと二人の子供が顔を出す。
そして、子供達と一緒にいた金髪の男性がブライトに尋ねる。
「すみません。この艦にアムロ・レイ大尉がいると思うのですが…。」
と、そこへアムロが駆けつけて来た。
「カイル!ライラ!」
二人の子供はアムロを見るなり駆け出した。
「「お母さん!」」
二人がアムロに抱きつくと、その二人をアムロも抱きしめる。
「アムロ!?」
ブライトとジュドーはアムロと子供たちを驚愕の目で見つめる。
「カイル!ライラ!二人の気配がしたからびっくりした!!まさかシャトルに乗ってたなんて!!」
アムロは二人の顔を見つめると、「無事で良かった!」と二人の頬にキスを贈り、またギュッと抱きしめた。
その三人を優しく見つめる男性がブライトへと軽く会釈をする。
「初めまして。アルフレッド・ウォレスと言います。アムロの主治医であの子達の保護者代わりをしています。この度は助けて頂き、ありがとうございました。」
ブライトは艦長室にアムロとアル、そして子供たちを案内した。
「すまんな。あそこだと誰の目があるかわからんからな。」
「いや、こっちこそ騒いじゃってゴメン」
応接セットのソファに子供達はジュースを飲みながらちょこんと並んで座っている。
長男のカイルはジュースをテーブルに置くと立ち上がり、ブライトへと視線を向ける。
「助けて頂きありがとうございました。僕はカイル・レイ、そしてこっちが妹のライラです。」と、7歳とは思えない大人びた表情で礼を述べた。
カイルのその姿に父親であるあの男が重なり、ブライトはドキリとする。
『大きくなって、益々似てきたな。バレるのは時間の問題かもしれんな。』
「ブライト…、あの人に会う事は出来ないだろうか…。出来る事ならこの子達の事を知らせたい。そしてこれ以上馬鹿な事をしない様説得したい。」
アムロはライラの頭を撫ぜながらブライトに訴える。
ブライトとしても出来ることなら会わせてやりたい。しかし、ネオ・ジオンの総帥となった彼に連邦の一士官が会うことなど夢のまた夢だった。
「…そうだな…。しかし、正規の手段では難しいな…。」
ブライトとアムロ、そしてアルは何も言えず、ただお互いを見つめる。
そこへコンコンとノックが鳴る。
「ジュドー・アーシタ少尉であります。」
「ジュドーか、入れ!」
ブライトがロックを解除するとジュドーが艦長室へと入室してきた。
ジュドーは子供たちにニカっと笑顔を向けるとブライトに敬礼する。
「シャトルの乗客の受入処理が完了しました。乗客達は当初の目的地であったロンデニオンへの入港を求めていますがどうしますか?」
ジュドーの報告にブライトは溜め息ながらに答える。
「そうするしかないな。乗客へは後で私から説明する。ご苦労だった。」
「はっ。それからアムロ隊長。医務室のハサン局長より検診の時間なので医務室まで来る様にとの連絡がありました。」
「あ!忘れてた!!」
アムロが言うのにアルがハッとする。
「そう言えばアムロ、君まさか連邦に復帰するのにあの条件を飲んだのかい!?」
アルはアムロの制服の袖をめくり腕を露わにする。そこには真新しい注射痕が幾つか出来ていた。
アムロは困った様な顔をして「ゴメン」と呟く。
ーーーアムロの脱走兵としての刑罰を免除し復帰を認める代わりに連邦が要求してきた条件は再びニュータイプ研究の被験体となる事。
アルは顔に手を当て大きく溜め息をつく。
「すみません。僕も検診に立ち会わせて下さい。」
アムロはアルと共に医務室へと向かった。
残された子供達はジュドーが相手をする事になり、とりあえず食事をしようと言うことになった。
「お兄さんもお母さんと同じパイロットなの?」
ライラはクリクリした大きな瞳をキラキラさせてジュドーに聞く。
その可愛い仕草にニッコリしながらジュドーは答える。
「うん。そうだよ。ライラちゃんのお母さんの部下なんだ。」
「お母さんって強いの?」
「ああ!凄く強いよ!!誰にも負けない!」
「そっかぁ!じゃあこの"せんそう"が終わったらまたライラとお兄ちゃんと一緒にいてくれるかなぁ」
その言葉にジュドーは胸が締め付けられる。そして隣にいるカイルの顔を見て、つい最近モニター越しに見たネオ・ジオンの総帥、シャア・アズナブルの顔を思い出す。
『似てる…。やっぱり昔、艦長とアムロさんが話してたのはシャア総帥の事なんだ…。』
ジュドーはライラの頭を撫ぜながら「そうだね。きっとまたお母さんと一緒に居られる様になるよ」と答えた。
そして、ラー・カイラムはシャトルの乗客達を乗せ、コロニー"ロンデニオン"へと入港した。
入港後、シャトルの乗客への対応やラー・カイラムの補給の為、アムロ達パイロットには数日の休暇が与えられた。
アムロとジュドーは子供たちとハサウェイ、クエスを連れてロンデニオンへと降り立った。
白鳥が見たいと言った子供達を連れてエレカで牧草地帯をドライブする。
「お母さん!!白鳥が飛んでる!!」
ライラがはしゃぐのを笑顔で見つめ、「湖へ行こうか」とアムロはエレカを林の奥の湖へ向けて走らせた。
すると、林の中を乗馬する人の姿が目の端に映った。そして、その気配にアムロはハッとする。
『シャア!?』
アムロはエレカを林に向け走らせる。
すると目の前に馬に乗ったシャアが現れた。
「シャア!!なんでここに!!」
アムロは思わず叫ぶと、ハンドルを隣に座って居たジュドーに預け飛び降りる。
そのままシャアに飛びかかると、二人は草原の上を転げ落ちた。
「アムロか!?」
「貴方!何をしてるんだ!なんでかつて一緒に戦った貴方が地球潰しなんて!!」
「地球にいる者達は地球の重力に引かれて地球を汚染するだけだ!」
「人間はそんなに愚かじゃない!!何をそんなに焦る!やけっぱちになってるだけじゃないか!」
「私の手を振り払った君に言われたくはないな!」
二人はお互いに掴み掛かりながら草原を転げる。
「シャア!!貴方に言わなくてはいけない事が!!」
ようやく止まってアムロはシャアにのし掛かる形になるがすぐさま押し込まれ、押し倒される。
シャアのスカイブルーの瞳を見つめ、アムロは言葉を続けようとするが、それはシャアの口付けによって阻まれる。
「ん!んん!」
「アムロ、私を止めたければ命懸けでかかってこい!宇宙で待っている。そこで決着を付けよう!」
作品名:Lovin' you 6 作家名:koyuho