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はろ☆どき
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novelistID. 27279
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「はふはふ兄さん」&「君に舞い降りた雪」ロイエドカルテ&小話

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【君に舞い降りた白】


 形ばかりの嫌みな後見人ぶって、その実真摯に子供の無鉄砲ぶりを諌めると、彼は騒々しく喚き散らした挙げ句に「帰る」の一言もなく執務室の扉を開け放したまま飛び出していってしまった。
 真っ直ぐ弟の待つ宿に戻ってくれればよいのだが――。そう思いを馳せて、低く雲の垂れこめた寒空を窓から見上げながらため息を幾度となく溢す。
 ここのところ寒さが一段と増している。勢いで外をぶらついてはいないだろうか。せめて寒さを凌げる場所に居るだろうか。どうせならここに戻ってきてくれはしまいか……。
 一向に減らない机上の書類を見やり、素直でないのはお互い様だとばかりに深くため息を吐いた副官により、能率が上がらないなら邪魔だと定時での帰宅命令が出された。
 早く帰ったところで、この心に吹くすき間風が収まるわけでもないものを。そう考えながら司令部を出ると、門の脇に赤と金を纏った子供が蹲っていた。
 こんなに早く出てくるとは思っていなかったのか、自分を見て慌てて立ち上がるが、きまり悪げに目を泳がせて視線を反らされた。
 おそらく本当は自分の無茶と無礼さを自覚していて、謝ろうと待っていたのだろう。根は律儀な子供だ。思わず心がほわりとする。
 が、すぐに彼が執務室を飛び出してから随分と時が経っているのに気づき、慌てて近づこうとした時、ふわりと舞う白いものが視界に映った。
「あ……」
 雪だ、と空を見上げて呟いた子供の旋毛に額に、寒さで赤くなった鼻先にと白い雪が舞い落ちた。
 目の前まで近づいて顔を覗き込んでも、上を見上げたまま逃げる様子もないのをいいことに、顔に乗った雪を上から順に唇で辿り、触れて溶かしてやる。
 びっくりして見事な金瞳を大きく開き、こちらを見上げたまま固まってしまった子供の唇に落ちた白が消えてしまわぬうちに、そっと唇を寄せるとそれは溶けて薄桃色の唇を潤した。  先程まで白い息を溢していた子供の唇は存外温かくて……その温もりに引き寄せられるように近づき、再び口づけを施した。

――寒さに凍えていたのは、自分の方だったのかもしれない――

 冬空の下、凍えた大人と子供は舞い散る白に紛れてひそりと寄り添い合った。

*fin*

20161230冬コミ91