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【青エク】(サンプル)踏ミ出シ往クハ

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踏ミ出シ往クハ


「おい、コラ、奥村ァッ!」
 勝呂の怒鳴り声が響く。ここはライトニング――ルーイン・ライト――の教務室だ。
「なっ、なんだよ。なんもしてねーぞ」
「なんもなワケあるか。その箱は向こう置いといたやろ。なんこっちに持って来てん」
 燐が驚いたような顔をした。こいつ、なんも聞いてへんのか。
「えっ、向こうのヤツこっちに持ってくるんだろ?」
「ちゃうわ。そこの奴、振った番号で向こう持って行け言うたんや」
 勝呂の言葉に燐がえぇっ! と声を上げる。
「マジか!」
 マジかではない。仕分け先に置いたはずのものを、仕分け元へ持って帰ってこられて、増えすぎた良く判らない道具を整理しようと振り分けた二日間が台無しになった。
「戻しとけや。今のでやらなあかんこと判ったやろ」
「おうっ! 任せとけ!」
 燐の元気な返事に、勝呂は溜め息を吐く。言葉通りに任せて良いものかどうか。また吃驚匣《ジャック・イン・ザ・ボックス》に引っかかったみたいに、おかしなものを弄るのではないか。
 勝呂はもう一つ溜め息を吐いて、雑然とした部屋を見渡す。
 ライトニングは勝呂が頼まれて調整しておいた予定を、見事なまでにまたずらしまくって、本来なら戻っている今の時間になっても帰ってきていない。
 自分が頼み込んで弟子にしてもらったとは言え、ズボラなところで彼自身が割を食う分には自業自得だと思う。
 ライトニングは、イルミナティの活動が活発化して来たことで日本支部に異動して来た。人員不足を解消するために祓魔師認定試験を繰り上げることになったからだ。だが早めるばかりでは経験の足らない祓魔師が増えてしまう。その実力の底上げをするための塾講師、と言う名目だ。初回などは、四大騎士《アーク・ナイト》の一人で召喚・詠唱の達人と名高い彼の講義と聞いて、候補生ばかりでなく祓魔師たちまでが押しかけて教室が超満員になったほどだ。だが、実際に始まった中身はいい加減すぎて――本当は余りに上級過ぎて、ライトニングにしか出来ない内容だったのではないかと思うが――あっという間に人が居なくなった。