【ダイヤのA】(サンプル)Things Among Us
Trick Trick Trick
忙しい秋大会の合間。試合を終えて寮に帰ってくると何故だか普段と違って全体が暗い。
「あれ、どうしたんだろ」
御幸が不思議そうに呟いたのを皮切りに、青道高校野球部員が口々に騒ぎ始める。
「停電か?」
「バッカ、よく見ろよ。周りの電灯は点いてんじゃねーか」
前園の言葉を倉持が否定する。確かに、電柱や自動販売機の電気は点いている。青心寮だけが夕暮れの中に一足早く闇に沈んでいた。
「え? あれ? どうしちゃったんだろ?」
マネージャーの夏川、梅本も訝しんだ様子で顔を見合わせる。監督である片岡は相変わらず無言だが、同じく不思議に思っているはずだろう。微塵も態度に見せていないが。
「何かあったんですかねぇ……」
コーチを務める落合も髭を弄りながら呟く。が、その割に手元で操作しているスマホの方が重要そうだ。
「判った。判りましたぞ!」
沢村が手を上げていきなり大声を出す。ライバル視しながらもいつも近くに居る(居るだけ、とは降谷の談)降谷と春市が流石に驚いた顔をする。
「沢村、判ったのか?」
「おうよ、東条。皆様ご安心下さい! この沢村には全てが判りました! 謎は全て解けた!」
ついでに、ジッチャンの名にかけて! と言う有名な一言は、「うるっせー!」と言う倉持の蹴りで中断された。
「で、何が判ったって?」
金丸の一言に、沢村がひくひくと鼻をうごめかす。その後ろで、御幸以下ほぼ全員が、水を向けた金丸に慌てたように手を振る。やめろ、それ以上沢村に喋らせるな、と言う合図だったのだが、残念ながら間に合わなかった。
「ふふふん。良いかカネマール。俺たちは別次元に迷い込んでしまったのだ!」
作品名:【ダイヤのA】(サンプル)Things Among Us 作家名:せんり