Lovin' you afterCCA 1
Lovin you after CCA1
"手術中"のランプが消え、廊下で待つ男に手術の終わりを告げる。
男が立ち上がると手術室の扉が開き、ドクターが現れた。
「ドクター!アムロは!?」
駆け寄る男に、ドクターは術帽とマスクを外す。その顔に男は驚き、足を止める。
「Dr.ウォレス!アウドムラのアルフレッド・ウォレスか!?」
「お久しぶりです。クワトロ大尉」
アルフレッドは驚愕する男に手袋を外しながらニッコリと笑顔を向ける。
「何を驚いているんですか?貴方と約束したでしょう?貴方が宇宙に行っている間、アムロを医師として支えると。」
その言葉にクワトロ大尉、否、シャア・アズナブルは戸惑いつつ「ああ…」と答える。
「貴方があんまり遅いんで、アムロを貰ってしまおうかと思っていましたよ。」
アルフレッドは自分を睨み付ける男にクスクスと笑う。
「そういうところ変わりませんね。相変わらず独占欲強すぎです!」
尚も睨み付ける男に、
「冗談ですよ。いや、半分は本気かな。アムロには全く伝わりませんでしたけどね。」
と、溜め息混じりに答える。
「アムロの手術は成功ですよ。やはり肋骨が肺を傷付けていたので、しばらくは安静が必要ですが、命に別状はありません。」
シャアはホッとと胸をなでおろすと「そうか…」と呟く。
「ところで…、肋骨の怪我以外でいくつか気になる事があるのですが、詳しい事をこちらの部屋でお聞きしてもよろしいですか?」
アルフレッドの声のトーンが一気に下がり、シャアを睨み付ける。
心当たりのあるシャアは、うっと息を詰めると促されるまま通された部屋へと足を進めた。
部屋の扉を閉め、シャアを席に座らせると、その向かい側にアルフレッドも腰を下ろす。
「カイルとライラは?」
一緒に居るであろうと思っていた小さな姿が見えない事に疑問を抱き、アルフレッドが尋ねる。
「もう夜も遅かったのでな。先ほど寝かしつけた。ベッドに入ると二人共あっという間に眠ってしまった。」
「そうですか…。二人共最後にアムロが出撃してからずっと気を張り詰めていましたからね…。ホッとしたんでしょう。」
「ああ。…あの子達には辛い思いをさせてしまった。」
シャアは机の上で組んだ指に力を込める。
「ホントですよ。特にカイルは"妹は自分が守らなければ"と常に気を張ってました。」
同じ兄として、カイルの気持ちが痛いほどわかる。シャアは唇を噛み締める。
「…で、本題です。」
アルフレッドは姿勢を正すとキッとシャアを睨み付ける。
「アムロの両手首と左足首に擦過傷ありました。それから唇の端、陰部に裂傷。身体中に鬱血痕。それに首には首を締めたような圧迫痕。」
最後の症状にシャアが目を見開き叫ぶ。
「首に圧迫痕!?それは私ではない!誰がそんな事を!!」
「首以外は貴方なんですね。」
アルフレッドの怒りの込もった冷たい声が響く。
「うっ…、すまない。」
「僕に謝ってどうするんですか!あれ、どう見てもレイプの跡でしょう!?それも手足を拘束して!!」
「手足の拘束は捕虜として仕方なかった。」
「だから?」とアルフレッドの怒りの込もった目がシャアを睨み付ける。しかし、シャアのあまりに辛そうな表情に段々怒りも薄れ、溜め息が出る。
「一体何があったんですか?」
アルフレッドのその言葉にシャアが重い口を開く。
「アムロから全てを聞いてショックを受けた。当時は私の手を振り払ったアムロに悲しみと自分を受け入れて貰えなかったという絶望を感じ、いつしかそれは怒りとなった。」
「勝手ですね。」
「ああ、勝手だ。しかし、それ程にアムロを欲していたのだ。ダカールでアムロを抱いた時の喜びは今でも忘れられない。しかし、アムロは私に何も告げず去ってしまった。」
「カイルを守る為には仕方なかった!彼女だってもの凄く苦しんだんだ!」
アルフレッドは机を叩いて叫ぶ。
「分かっている!しかし、打ち明けて欲しかった。そして私を頼って欲しかった。」
「タイミングが悪かったんですよ…。ブレックス准将が生きていたならば…。」
「そうだな…。確かにタイミングは最悪だった。しかし、彼女は私を信じてはくれなかったのだ。そう思うと…、悔しさと情けなさと怒りで…我を忘れてしまった…。」
シャアは拳を強く握りしめる。
「クワトロ大尉…」
「気付いたら、彼女を引き倒し、襲いかかっていた。抵抗する彼女を抑えつけ、無理矢理ノーマルスーツを脱がし乱暴に抱いた。傷付き、血を…涙を流す彼女を構いもせずに何度も、何度も!暴走する自分を止められなかった!」
シャアは両手で顔を覆い悲痛な声で叫ぶ。
「…彼女が完全に意識を失い…グッタリとシーツに横たわっているのを見て…そして、シーツに散らばる血の跡を見て、一気に血の気が引き、我に返った。」
アルフレッドは目の前に座る、何もかもを兼ね備えた完璧な男の弱い部分を垣間見たような気がした。
「彼女は非道な事をしている私に対して、罵倒や助けを乞うでもなく、ただ「ごめん」と謝り続けていた。そんな彼女を私は…」
シャアは机に肘をつき、組んだ指を額に当て苦悩の表情を浮かべる。
「アムロはそれ程までに貴方を愛しているんですよ。」
シャアはアルフレッドの言葉に顔を上げる。
そんなシャアを優しく見つめると、アルフレッドは言葉を続ける。
「あの光の中で…貴方も自分の気持ちに気付いたのではないですか?そして、貴方達はようやく分かり合えたのではないですか?」
シャアは目を閉じると、あの蒼い光を思い出す。
「…ああ、私は彼女を…アムロをニュータイプとしてではなく、彼女自身を欲し、心から愛している事にようやく気付いた…。彼女も私を愛してくれていると言ってくれた。」
アルフレッドは小さく溜め息をつくと優しく微笑む。
「アムロが許しているのなら、僕がこれ以上貴方を責めても仕方ありませんね。」
「ドクター…」
「でも!!また泣かせるような事をしたら今度こそ遠慮なくアムロを奪いに行きますからね!!」
アルフレッドはシャアにクギを刺す。
「もう二度と彼女を泣かせたりしない。今ここで君に誓おう。」
シャアは立ち上がるとアルフレッドに手を差し出す。
アルフレッドはその手をとり、あの日アウドムラで"医師としてアムロを支える"と約束した時のように握手に応える。
「そろそろ麻酔が切れるのでアムロの側に行ってあげて下さい。」
そう告げるとシャアは「ありがとう」と告げ、急いで部屋を後にした。
残されたアルフレッドは椅子の背にもたれ掛かると「はぁ」と溜め息をつく。
「僕も大概お人好しだなぁ…。」
アルフレッドの呟きが部屋の中に虚しく響いた。
ーーーー
『暖かい…。』
夢の中を漂うアムロを暖かい温もりが包み込む。その温もりにアムロは意識を浮上させると、目の前に眩しい金色の輝きを見つける。
「アムロ!目が覚めたか?」
何度も瞬きを繰り返し、目の前の存在を確かめる。
「シャ…ア?」
麻酔から覚め切らない虚ろな頭で追い求めていた人の名を呼ぶ。
「そうだ。私だ!アムロ!」
その言葉に、もう一度目を大きく開き、自分の名を呼ぶ人を確認する。
「シャア…。本当に貴方…。」
"手術中"のランプが消え、廊下で待つ男に手術の終わりを告げる。
男が立ち上がると手術室の扉が開き、ドクターが現れた。
「ドクター!アムロは!?」
駆け寄る男に、ドクターは術帽とマスクを外す。その顔に男は驚き、足を止める。
「Dr.ウォレス!アウドムラのアルフレッド・ウォレスか!?」
「お久しぶりです。クワトロ大尉」
アルフレッドは驚愕する男に手袋を外しながらニッコリと笑顔を向ける。
「何を驚いているんですか?貴方と約束したでしょう?貴方が宇宙に行っている間、アムロを医師として支えると。」
その言葉にクワトロ大尉、否、シャア・アズナブルは戸惑いつつ「ああ…」と答える。
「貴方があんまり遅いんで、アムロを貰ってしまおうかと思っていましたよ。」
アルフレッドは自分を睨み付ける男にクスクスと笑う。
「そういうところ変わりませんね。相変わらず独占欲強すぎです!」
尚も睨み付ける男に、
「冗談ですよ。いや、半分は本気かな。アムロには全く伝わりませんでしたけどね。」
と、溜め息混じりに答える。
「アムロの手術は成功ですよ。やはり肋骨が肺を傷付けていたので、しばらくは安静が必要ですが、命に別状はありません。」
シャアはホッとと胸をなでおろすと「そうか…」と呟く。
「ところで…、肋骨の怪我以外でいくつか気になる事があるのですが、詳しい事をこちらの部屋でお聞きしてもよろしいですか?」
アルフレッドの声のトーンが一気に下がり、シャアを睨み付ける。
心当たりのあるシャアは、うっと息を詰めると促されるまま通された部屋へと足を進めた。
部屋の扉を閉め、シャアを席に座らせると、その向かい側にアルフレッドも腰を下ろす。
「カイルとライラは?」
一緒に居るであろうと思っていた小さな姿が見えない事に疑問を抱き、アルフレッドが尋ねる。
「もう夜も遅かったのでな。先ほど寝かしつけた。ベッドに入ると二人共あっという間に眠ってしまった。」
「そうですか…。二人共最後にアムロが出撃してからずっと気を張り詰めていましたからね…。ホッとしたんでしょう。」
「ああ。…あの子達には辛い思いをさせてしまった。」
シャアは机の上で組んだ指に力を込める。
「ホントですよ。特にカイルは"妹は自分が守らなければ"と常に気を張ってました。」
同じ兄として、カイルの気持ちが痛いほどわかる。シャアは唇を噛み締める。
「…で、本題です。」
アルフレッドは姿勢を正すとキッとシャアを睨み付ける。
「アムロの両手首と左足首に擦過傷ありました。それから唇の端、陰部に裂傷。身体中に鬱血痕。それに首には首を締めたような圧迫痕。」
最後の症状にシャアが目を見開き叫ぶ。
「首に圧迫痕!?それは私ではない!誰がそんな事を!!」
「首以外は貴方なんですね。」
アルフレッドの怒りの込もった冷たい声が響く。
「うっ…、すまない。」
「僕に謝ってどうするんですか!あれ、どう見てもレイプの跡でしょう!?それも手足を拘束して!!」
「手足の拘束は捕虜として仕方なかった。」
「だから?」とアルフレッドの怒りの込もった目がシャアを睨み付ける。しかし、シャアのあまりに辛そうな表情に段々怒りも薄れ、溜め息が出る。
「一体何があったんですか?」
アルフレッドのその言葉にシャアが重い口を開く。
「アムロから全てを聞いてショックを受けた。当時は私の手を振り払ったアムロに悲しみと自分を受け入れて貰えなかったという絶望を感じ、いつしかそれは怒りとなった。」
「勝手ですね。」
「ああ、勝手だ。しかし、それ程にアムロを欲していたのだ。ダカールでアムロを抱いた時の喜びは今でも忘れられない。しかし、アムロは私に何も告げず去ってしまった。」
「カイルを守る為には仕方なかった!彼女だってもの凄く苦しんだんだ!」
アルフレッドは机を叩いて叫ぶ。
「分かっている!しかし、打ち明けて欲しかった。そして私を頼って欲しかった。」
「タイミングが悪かったんですよ…。ブレックス准将が生きていたならば…。」
「そうだな…。確かにタイミングは最悪だった。しかし、彼女は私を信じてはくれなかったのだ。そう思うと…、悔しさと情けなさと怒りで…我を忘れてしまった…。」
シャアは拳を強く握りしめる。
「クワトロ大尉…」
「気付いたら、彼女を引き倒し、襲いかかっていた。抵抗する彼女を抑えつけ、無理矢理ノーマルスーツを脱がし乱暴に抱いた。傷付き、血を…涙を流す彼女を構いもせずに何度も、何度も!暴走する自分を止められなかった!」
シャアは両手で顔を覆い悲痛な声で叫ぶ。
「…彼女が完全に意識を失い…グッタリとシーツに横たわっているのを見て…そして、シーツに散らばる血の跡を見て、一気に血の気が引き、我に返った。」
アルフレッドは目の前に座る、何もかもを兼ね備えた完璧な男の弱い部分を垣間見たような気がした。
「彼女は非道な事をしている私に対して、罵倒や助けを乞うでもなく、ただ「ごめん」と謝り続けていた。そんな彼女を私は…」
シャアは机に肘をつき、組んだ指を額に当て苦悩の表情を浮かべる。
「アムロはそれ程までに貴方を愛しているんですよ。」
シャアはアルフレッドの言葉に顔を上げる。
そんなシャアを優しく見つめると、アルフレッドは言葉を続ける。
「あの光の中で…貴方も自分の気持ちに気付いたのではないですか?そして、貴方達はようやく分かり合えたのではないですか?」
シャアは目を閉じると、あの蒼い光を思い出す。
「…ああ、私は彼女を…アムロをニュータイプとしてではなく、彼女自身を欲し、心から愛している事にようやく気付いた…。彼女も私を愛してくれていると言ってくれた。」
アルフレッドは小さく溜め息をつくと優しく微笑む。
「アムロが許しているのなら、僕がこれ以上貴方を責めても仕方ありませんね。」
「ドクター…」
「でも!!また泣かせるような事をしたら今度こそ遠慮なくアムロを奪いに行きますからね!!」
アルフレッドはシャアにクギを刺す。
「もう二度と彼女を泣かせたりしない。今ここで君に誓おう。」
シャアは立ち上がるとアルフレッドに手を差し出す。
アルフレッドはその手をとり、あの日アウドムラで"医師としてアムロを支える"と約束した時のように握手に応える。
「そろそろ麻酔が切れるのでアムロの側に行ってあげて下さい。」
そう告げるとシャアは「ありがとう」と告げ、急いで部屋を後にした。
残されたアルフレッドは椅子の背にもたれ掛かると「はぁ」と溜め息をつく。
「僕も大概お人好しだなぁ…。」
アルフレッドの呟きが部屋の中に虚しく響いた。
ーーーー
『暖かい…。』
夢の中を漂うアムロを暖かい温もりが包み込む。その温もりにアムロは意識を浮上させると、目の前に眩しい金色の輝きを見つける。
「アムロ!目が覚めたか?」
何度も瞬きを繰り返し、目の前の存在を確かめる。
「シャ…ア?」
麻酔から覚め切らない虚ろな頭で追い求めていた人の名を呼ぶ。
「そうだ。私だ!アムロ!」
その言葉に、もう一度目を大きく開き、自分の名を呼ぶ人を確認する。
「シャア…。本当に貴方…。」
作品名:Lovin' you afterCCA 1 作家名:koyuho