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Theobroma ――南の島で5

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(ああ、泣いていたのか……)
 疲れた様子で、
(眠れなかったんだろう……)
 顎のラインがシャープで、
(少し痩せたように見えた……)
 また、インスタンドフードを食べているのか?
 オレがいないと、すぐに手を抜いてしまう……。
「ダ、イ……キラ……」
 シロウの言い放った日本語を反芻して、飛び起きた。
「ダイ、キライ……ダ?」
 冷たい汗が背中を流れる。
「嫌い……? う、嘘だろう……?」
 島に帰って、はたしてシロウと話し合うことができるのだろうか、オレは……。



「アーチャー、頑張ってください」
「何を以て、頑張れ、などと言うんだ、君は……」
「う……、あなたがシロウと別れてしまうと、後味が悪いというか、ですね……、えっと……」
 あらぬ方へ視線を送るアルトリアに苦笑してしまう。
「その時は、責任を取ってもらおうか、アルトリア」
「え? ま、待ってください! 私の責任は四分の一なのでしょう?」
「いろいろと入り用なんだ。日本へ結婚の挨拶にも行かなければならないことだし……」
 口から出まかせだが、そうならないとも限らない。
「け、っこん? 本当ですか?」
 アルトリアは目を丸くして、なぜか両手を組んで羨望の眼差しを送ってくる。
「あ、ああ。だから、今回の報酬は、いつもの倍で手を打とう」
「あああ、わ、わかりました! では、即、振り込んでおきます!」
 まあ、このくらい吹っかけても大丈夫だろう。彼女の資産の微々たるものだろうから。
 アルトリアとロビーで別れてホテルを出る。
 港へ向かう足取りは、軽いものではなかった。
 シロウに会える喜びと、何を言い渡されるかという怖さで、いつもよりも歩幅が小さくなってしまっていた。


Theobroma ――南の島で5 了(2017/1/16)
作品名:Theobroma ――南の島で5 作家名:さやけ