檻
暗い夜道を軽やかに歩く青年が、細い路地へと歩みを進めたそのとき、自分に向かって飛んでくる小さな影に気付き軽く避ける。
「何のようかな?」
べちゃっと言う音を立てて地面で破裂し、ペンキをぶちまけたそれを横目に青年は、投げつけてきた相手へと視線を向ける。
「ちょっとした嫌がらせと、お願いがあるんです」
薄暗い路地の向こうには小柄な少年が同じような物をいくつも持って立っていた。
「黒沼、青葉君…だったかな?」
「やっぱり俺のこと知ってましたか」
青葉がぽんぽんとイザヤの足元に向かってゴム風船を投げつけると、臨也は飛び散るペンキから逃げるように飛び避け、大袈裟に肩をすくめて青葉を見据える。
「それで、お願いって何なのかな?」
「しばらく大人しくしてて欲しいんです。せっかく帝人先輩を引き込んだのに、あんたがちょっかいかけてくると揺れて大変なんで」
すべての風船を投げつけ終えた青葉は塀にもたれかかり吐き捨てるように言う。
「面白いね、君も。けど、それを俺が聞くとでも?やっと病院抜け出してきたのに冗談じゃないよ」
「でしょうね。だけど俺も何も考えずに来たわけじゃないんです」
ジャケットのポケットに手を入れたまま飄々とした笑みを浮かべている臨也を視界から外さないようにしながら、青葉は携帯を取り出す。
「人が来る前に逃げることくらい簡単だよ」
「普通ならね。でも、そろそろ時間だからさ」
「時間?なん…の…」
疑問を思わず口にしたとたん、ぐらりと臨也の視界が揺れ思わず壁に腕をつくと青葉へと視線を向ける。
「これは…何…を…」
くらくらと頭が揺れ、失いそうになる意識を必死に保ちその場を逃れようと後ずさる。
「それだけ吸ってれば無理だと思いますよ」
青葉は逃げようとする臨也を追うこともせず距離を取ったまま目だけでその姿を追う。
「ま…さか…」
臨也は周りに飛び散っているペンキの中に別のものが紛れ込んでいるのにようやく気づくが、意識を保っていることが出来ず壁に縋るようにその場へと倒れ込む。
「俺だけだからって油断しすぎ」
上手くいったことにほっと息を吐くと、青葉はマスクを付けゆっくりと臨也へ近づく。本当に意識を失っているのか確認するように軽く臨也の肩を蹴り反応を伺うとクロロフォルムで湿らせたハンカチを口に含ませ、引きずってその場から離れる。
「何のようかな?」
べちゃっと言う音を立てて地面で破裂し、ペンキをぶちまけたそれを横目に青年は、投げつけてきた相手へと視線を向ける。
「ちょっとした嫌がらせと、お願いがあるんです」
薄暗い路地の向こうには小柄な少年が同じような物をいくつも持って立っていた。
「黒沼、青葉君…だったかな?」
「やっぱり俺のこと知ってましたか」
青葉がぽんぽんとイザヤの足元に向かってゴム風船を投げつけると、臨也は飛び散るペンキから逃げるように飛び避け、大袈裟に肩をすくめて青葉を見据える。
「それで、お願いって何なのかな?」
「しばらく大人しくしてて欲しいんです。せっかく帝人先輩を引き込んだのに、あんたがちょっかいかけてくると揺れて大変なんで」
すべての風船を投げつけ終えた青葉は塀にもたれかかり吐き捨てるように言う。
「面白いね、君も。けど、それを俺が聞くとでも?やっと病院抜け出してきたのに冗談じゃないよ」
「でしょうね。だけど俺も何も考えずに来たわけじゃないんです」
ジャケットのポケットに手を入れたまま飄々とした笑みを浮かべている臨也を視界から外さないようにしながら、青葉は携帯を取り出す。
「人が来る前に逃げることくらい簡単だよ」
「普通ならね。でも、そろそろ時間だからさ」
「時間?なん…の…」
疑問を思わず口にしたとたん、ぐらりと臨也の視界が揺れ思わず壁に腕をつくと青葉へと視線を向ける。
「これは…何…を…」
くらくらと頭が揺れ、失いそうになる意識を必死に保ちその場を逃れようと後ずさる。
「それだけ吸ってれば無理だと思いますよ」
青葉は逃げようとする臨也を追うこともせず距離を取ったまま目だけでその姿を追う。
「ま…さか…」
臨也は周りに飛び散っているペンキの中に別のものが紛れ込んでいるのにようやく気づくが、意識を保っていることが出来ず壁に縋るようにその場へと倒れ込む。
「俺だけだからって油断しすぎ」
上手くいったことにほっと息を吐くと、青葉はマスクを付けゆっくりと臨也へ近づく。本当に意識を失っているのか確認するように軽く臨也の肩を蹴り反応を伺うとクロロフォルムで湿らせたハンカチを口に含ませ、引きずってその場から離れる。