Lovin' you after CCA 2
と、そのアルの腕にライラがしがみつく。
「アルはライラと結婚するから良いの!!」
「ライラ…」
ライラの言葉にアルは頭を抱える。
「ライラ、あのね、僕は君のお父さんやお母さんと大して年が変わらないくらい年上なんだよ。」
「愛があれば年なんて関係ないわ!」
そう言い切るライラにガックリと肩を落とすアルに向かって「そんな事は認めん!!」とシャアが叫び、呆気にとられていたエドヴァルドが大笑いする。
「そうか、ライラ!ではアルフレッドとアムロには早々に離婚してもらって、ライラが16歳になったら結婚するか!!」
「うん!」
「Mr.レイブン!!」
満面の笑みで頷くライラと焦るアルを横目にエドヴァルドはシャアとアムロに向き直る。
「とりあえず、アムロはアナハイムからラー・カイラムへの出向メカニックの扱いにしておけばいい。結婚云々はまだまだ情勢が安定しない今は難しかろう。ましてやネオ・ジオンの総帥に連邦の白い悪魔が嫁ぐとは公表できまい?頃合いを見てアムロは連邦のアムロ・レイではなくただのアムロ・レイとして嫁げばいい。」
エドヴァルドはアムロの頬を両手で包むと優しく微笑む。
「私はお前の幸せを心から祈っているよ。テムの忘形見であるお前は私にとっては娘も同然だ。」
涙を流すアムロをそっと抱きしめると耳元で囁く。「幸せにおなり」と…。
「エド!!」
アムロはエドヴァルドにギュッと抱きついた。
「ああ、そうだ。アムロ、これをお前に渡さねば。」
エドヴァルドは胸ポケットから小さな懐中時計を取り出す。古いアンティークのそれをアムロに手渡すと蓋を開けるように促した。アムロが蓋を開くと、そこには両親と幼いアムロが仲良く写った写真がはめ込まれていた。
「テムの形見だよ。」
「え?」とアムロはエドヴァルドを見上げる。
「14年前、サイド7で敵襲があった日、テムは私たち若い技術者を逃すと、1人でガンダムをホワイトベースに搬送しに行った。その時にこれをアムロに渡してくれと頼まれたんだ。テムは死を覚悟していたのだろう。命を懸けてガンダムを護ろうとしていたんだ。」
アムロは呆然と写真を見つめる。
「テムはお前にとって決して良い父親ではなかったが、彼なりにお前をとても愛していたよ。ガンダムの開発も、これが量産されればアムロくらいの歳の若者が戦争に駆り出される事なく戦争が終わるだろうと、いつもそう言っていた。」
それにブライトが頷く。
「それは私も聞いたことがあります。それから、テム氏の机にアムロの写真が飾ってあったのを見ましたよ。」
アムロは「えっ」と目を上げる。
「テムもまさかそのガンダムにアムロが乗ることになるとは思いもしなかったろうがな…」
エドヴァルドが自嘲の笑みを浮かべて呟く。
「そんな…知らなかった。」
アムロは呆然とした顔で呟く。
「あの時…僕、父さんに酷い事言った。民間人よりもガンダムを優先する父さんに『父さんは人間よりもモビルスーツの方が大切なのか!?』って、僕よりも大切なのかって思ったら悲しくて酷い事を…。」
アムロは涙を流して懐中時計を握り締める。
「爆撃で父さんやパイロットが吹き飛ばされて…、フラウ達を…コロニーを守りたかったのもあるけど、多分僕から父さんを奪ったガンダムを父さんから奪ってやろうって気持ちもあってガンダムに乗り込んだんだ。父さんの端末をハッキングして起動コードも知ってたから…。」
アムロは15歳の頃に戻ったかのような口調で語る。
「サイド6で再会した父さんはその時の酸素欠乏症の影響で普通じゃなくなってて…やっぱり僕を見てくれなくて、それで僕は父さんを見捨てたんだ。戦後に父さんが死んだって聞いてもそんなに悲しいと思わなかった…。酷い子供だよね…」
アムロは悲しく笑うとシャアを見つめる。
「あのすぐ後…ララァと…貴方に会った。ララァは突然僕の中に入ってきた。僕とララァの魂は共鳴して混じりあって…でも心地良くて…不思議な感覚だった。」
シャアもアムロを見つめる。
「そうだな。あの時初めて生身のアムロ・レイに会った。」
「ふふ…、貴方は僕のエレカが泥にハマったのを自分の制服が汚れるのも気にせず助けてくれて…。僕は目の前にいるのが赤い彗星のシャアだって気付いてオドオドしてたっけ。」
シャアがクスリと笑う
「ああ、私もまさか目の前の小柄な少年兵がガンダムのパイロットとは思いもしなかったからな。」
そう言いながら、シャアはアムロを胸に抱きしめる。
その話を聞いていたブライトが大きな溜め息を吐く。
「サイド6を出港した後、お前の様子が変わったのはそう言う事か…。」
「ブライト?」
「それまではまだ"自分は民間人だ"と言う気持ちが強かったお前が、あれを境に軍人の目になっていった。そしてどんどんニュータイプへと覚醒していくお前を見て…、正直俺は少し怖かった。普通の子供だったお前を生き残る為とは言え、そんな風にしてしまった責任は俺にあるからな。」
「ブライト…!そんな事!」
「あの時、ア・バオア・クーで、お前が退艦命令を出すよう言ってくれなければ俺たちはホワイトベースと共に炎に巻かれて死んでいた。沈むホワイトベースを見て思ったよ。俺はお前に全てを背負わせて、そのお前を置き去りにして艦を放棄した情けない艦長だと。」
ブライトは指を膝の上で強く握ると悲痛な声で「すまなかった」と呟いた。
「そんな事ない!ブライトが艦長だったから戦えたんだ!それに、あの時ブライト達が呼んでくれたからみんなの元に帰れたんだ!」
「アムロ…?」
「あの時…もうダメだと思った。僕もララァの元へ行くんだって思いながら大破したガンダムのコックピットに座ってた。そうしたらみんなが戦っているのが見えて…。多分ララァが見せてくれたんだと思う。そしてみんなの乗ったランチが脱出したのを確認して、もう心残りは無いと思ってたら聞こえたんだ。みんなの僕を呼ぶ声が。ブライトの声も聞こえたよ。だから帰れたんだ!」
「アムロ…。」
ブライトは少し微笑むとアムロを見つめる。そしてシャアに向き直るとその目を見据える。
「シャア総帥、我々にできる事ならば何でもしよう。どうかアムロの事をよろしく頼む。」
ブライトはシャアへと頭を下げた。
「承知した。アムロを必ず幸せにする。」
ブライトは視線をシャアに戻すとにっこりと笑った。
そして、数日後。レウルーラはラー・カイラムを伴い、スウィートウォーターへと帰還した。
ネオ・ジオンのシャア総帥はスペースノイドの自治権獲得とその発展に尽力を注ぎ、スペースノイドとアースノイドの共存に貢献した。
そしてその傍らには、妻となったアムロがいつも寄り添い支えていたという。
end
シャアとアムロのイチャコラ新婚生活でも書こうかな。
作品名:Lovin' you after CCA 2 作家名:koyuho