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【APH】望む落陽 まだ見ぬ夜明け

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そう、おれははじめから存在してなかった。そこにただ、在っただけ。マリアとは違い、望む前に全てを差し出され、それを支配していくために神のようであれと名を与えられた。かのローマ帝国のようにあれと、過去の栄光と幻に皆が夢を見ていたんだ。
「何を馬鹿なことを…」

「……はやく、らくになりたい」

今はそればかりを願う。もう何も望まない、願わない、祈らない。…もう、思うすべてが遅く、泡沫の泡のように消えてしまった。これが悪い夢ならもう覚めなければ。もう、何も解らない。思い出せない。ああ、意識が拡散していく。この世界は酷く、苦しい。どうして、この世界はおれにはやさしくしてくれないのだろう。

 辛い。痛い。悲しい。寒い。冷たい。痛い。…苦しい。

「…ころしてくれ」

誰か、今度こそ、本当にこの役に立たない心臓を完全に止めて、終わりにしてくれ。おれを滅ぼしてくれ。もう、何もかもが辛いんだ。

「……ま、りあ、おまえなら、ひとお…いに…おれ…らくに…てくれるだ…うに」

…戦うために生き、奪うことでしか生きられぬ聖母の名を持つ、騎士よ。…どうか、この哀れな亡国に祝福を。…この身の全てを、お前が奪い、そして、おれを殺してくれたらいいのに…。

 …ああ、夕陽が心臓を貫く。

 濁ったその瞳に映った斜陽は赤く延び、心臓に落ち、神聖ローマを照らす。神聖ローマは一度、微かに笑むとゆっくりと目を閉じた。







 



 暗い黒い森。

 鬱蒼と繁る木々の間から、一筋の光が延びる。その光は森の奥を照らし、静かに眠っていた子どもの目蓋をそっと撫でた。

「………」

子どもは光の眩しさに目を開く。そして、立ち上がると光が導くままに歩きはじめた。







オワリ