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1 Romanze

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先程の―、息もつかせぬような情熱のひと時の余韻に取り残されるように、ベッドの上にユリウスは一人ぼんやりと座り込む。シュミーズの裾がベッドに白い花のように広がる。
先程の情熱の跡―、透けるような白い肌に散らされた紅の花を、月の光が柔らかに照らしだす。その赤い情熱の跡に白く細い指を滑らせる。

「痛…」
下腹部を抑えながらシーツに目をやる。―そこには目に鮮やかな赤い純潔の証。
ユリウスは疼く下半身に耐え、俯きながら、シュミーズの上にアルラウネのお下がりだというドレスを纏う。
コックリとした深紅のビロウドのドレスはアルラウネの黒い髪と白い肌に良く映えたものだったのであろう。
だがその深い赤のドレスは、抜けるように白いユリウスの肌にも良く映え、彼女の少し硬質な美貌をますます美しく見せた。高いスタンドカラーが、首筋につけられた紅い花を覆い隠す。


「ユリウス…いえ、ユリア。着替えは済んで?」

ノックと共にアルラウネが部屋に入って来た。

「素敵よ。よく似合っているわ。…髪を結いましょう」

そう言うとアルラウネはユリウスをドレッサーの前に座らせ、唇に淡い紅を差し、肩下あたりでくるくると波打つ金髪を少し取って編み、リボンで束ねた。

「さあ、出発するわ。外に辻馬車を待たせてあるから」

ドレスの上にケープを羽織り、ボンネットを被った旅装で、アルラウネに背中を押されて、部屋を後にし、屋敷を出る。

門の前に停められた辻馬車の前に、アレクセイが先に待っていた。

アルラウネに連れられたユリウスの姿を見て、アレクセイは一瞬、鳶色の瞳を見開いた。

アレクセイの一瞬の表情の変化に気づいたユリウスがおずおずと、

「あ、あの…。クラウス…」
― 変…だよね。やっぱ…。

消え入りそうな声でそう言って俯く。

そんなユリウスの頰を、アレクセイは両手で包むと上を向かせ、不安そうに揺れる碧の瞳をじっと見つめながら首を横に振った。

アレクセイの鳶色の瞳が「綺麗だ」と告げる。最愛の鳶色の瞳に覗き込まれた碧の瞳が、いつものような強い輝きを宿す。そこにはもう、不安も恐れもなかった。

「さあ、急いで。ミュンヘンの◯◯邸まで」

馬車がアルラウネとクラウスーアレクセイ・ミハイロフ、そして今やユリアと名を変えたユリウスを乗せて、旧ベーリンガー邸を離れる。
そしてその僅か一カ月後、この三人はドイツを離れる事となる。

ユリウス・レオンハルト・フォン・アーレンスマイヤ。
1904年11月某日を最後にー、失踪。
以後行方不明のまま、アーレンスマイヤ家はその5年後、彼の死亡届を出す。

作品名:1 Romanze 作家名:orangelatte