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4 15の決断

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「さて…と。お嬢さん。あなたの齢を訊いてもいいかな?」

「15…です」

「そう。今から聞くことは大切な事だから、なるべく覚えていることを正確に答えて貰えるかな?最後の月のものがあったのは…いつか憶えている?」

「…多分…、昨年の末ごろ…いえ、もう少し前だったかも…」

「そう。じゃあ、ちょっと込み入った話を聞くけれど、いいかな?」

「?はい」

「あなたは…その頃に男性と性交をしましたか?」

医師の質問に思わずユリウスの顔が耳まで赤くなる。

「お嬢さん。これは大事なことだから、ちゃんと包み隠さず話してもらえるかな?」

医師の真剣な声と眼差しにユリウスは赤い顔を両手で覆い俯きながら、コクリと頷いた。

「その男性は…?」

「…わたしの…、夫…ではまだありませんが、将来を約束した男性です」

消え入りそうな声でユリウスはやっとの事でそう答えた。

医師は俯いているユリウスの両肩をとって上を向かせると、その碧の瞳をしっかり見つめて言った。

「お嬢さん。君のその体調不良は、妊娠初期の症状によるものだ。君のお腹の中には命が芽生えているんだよ?私の言っている事が分かるね。まだ15歳の君の身体はまだまだ女性としては未成熟で、本来ならば妊娠はもう少し大人になってからの方が望ましいのだけど…、宿ってしまった命は…出来れば君のその胎内で慈しんであげて欲しいと私は思う。突然こんなことを宣告されて動揺しているとは思うけれど、君はどうしたい?」

―ぼくの…子供。…ぼくと…アレクセイの、子供?
ユリウスはその衝撃的な宣告に、暫し思考が停止し、ベッドの上で固まっていた。
が、そう告げられたユリウスの両手は無意識に新しい命の宿った腹部を、まるで慈しみ守るかのように優しく覆っていた。

「…産みます。この子…、アレクセイとぼくの赤ちゃん…。産みます!先生、ぼ…わたしは何をしたら…この子のために何をしたらいいでしょうか?」

戸惑いもはにかみも消え失せ、先ほどまで伏せられていた碧の瞳は、強い決意の光を放ち医師を見つめる。

「そうか。強い光を宿した…いい目をしているね。君は若いけれども、案外芯の強い子かもしれないね。きっといいお母さんになるだろう。…まずは、栄養をとって貧血の改善に努めなさい。それから無理は禁物だよ。身体を冷やさないように。それから…部屋の外で待っているのは―あなたのお姉さん?彼女にもきちんと事実を知ってもらわないとね」
―彼女を部屋に入れてもいいかな?
そう言って医師はユリウスの肩を優しく叩いた。
ユリウスは無言で、しかししっかりと頷いた。

作品名:4 15の決断 作家名:orangelatte