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6 15の決断Ⅲ

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「ただいま」

「お帰りなさい。― ねえ、アルラウネ、ここなんだけど…」

外から帰って来たアルラウネをユリウスが早速質問攻めにする。

「はいはい。ちょっと待って…。えーっと。これはね…」

金と黒の二つの頭が机を囲む。

「分かった。ありがとう、アルラウネ」

「あなた、もうそんなところまで読み進めたの?ミュンヘンに潜伏していた時から…聡明な質なのは分かっていたけど、すごい進度ね。…根を詰めているのではなくて?ずっと座りっぱなしは身体によくないとお医者様も仰っていたでしょう?」

「うふふ…。簿記は…なんかぼ…わたしに合っている気がするんだ。アーレンスマイヤ家にいたときに…下の姉様が…「ピアノの鍵盤なんて叩いていないで、会計の勉強でもした方がよくてよ」とぼ…わたしに言ったけど…、本当に、今になってみると、その通りだったかもね。フフ…」
ユリウスは―、滅多に口にしないレーゲンスブルグの実家の―、残してきた家族の思い出話を持ち出すと、少し寂し気に笑った。

― そういえば、彼女の実家はレーゲンスブルグの旧家でわりと手広く商売をしていたのだっけ…。

「そうね、あなた数字に強そうだし、適性あるのかもしれないわね。この調子で励みなさい。…あ!でも根の詰め過ぎはだめよ。今日も一体何時間やっていたの?もう今日は終わりになさい。さ、私も疲れたわ。お茶にしましょう?」

そう言ってアルラウネがユリウスの前に開かれていた本を閉じた。

「は~い。今、お茶淹れるね」
―よっこいしょっと…。

ユリウスは大きなお腹を抱えて立ち上がり、サモワールに火を入れた。

「お腹、本当に大きくなったわね」
アルラウネがユリウスの大きなお腹に手をやる。

「うふふ…。子供が出来るとね、胸も大きくなるんだ…。」
―見る?
ユリウスがアルラウネにいたずらっ子のような笑みを向ける。

「いいわよ。…しまっときなさい」
ユリウスの笑顔につられるように、アルラウネのややきつめの整った顔が思わず綻んだ。

「男の子かしら…女の子かしら」

「う~ん。ぼ…わたしはこの子は男の子のような気がする。亜麻色の髪の元気な男の子…」

「母親のカン?」

「そうかもね…」

「楽しみね…」

「うん」

― さて…と。

ユリウスは一本の長いお下げに編んだ金の髪にショールを被り、篭を手にする。

「そろそろ晩御飯の支度をしなくちゃ。買い物行ってくるね」

今のユリウスはお腹を締め付けないサラファンを着用している。素朴なその伝統衣装はまだ16歳になったばかりの可憐な少女に良く似合っていた。

「一人で大丈夫?」

「アルラウネは心配性だなぁ。…大丈夫だよ。ゆっくり行くから。じゃあ行ってきます」

外へ出たユリウスのゆっくりとした足音が徐々に遠ざかっていく。
作品名:6 15の決断Ⅲ 作家名:orangelatte