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7 家族

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「俺がついていてやれなくて…ごめんな。一人でよく頑張ったな」
ベッドに腰かけたアレクセイが、大仕事を成し遂げたばかりの妻の肩を優しく抱き寄せる。

数日振りに包まれる夫の大きな腕の中で満足そうにユリウスは首を横に振った。

「ううん。…一人じゃなかったよ。アルラウネに、ドクター、それに会うたびに優しい声をかけて励ましてくれた市場のおじさんやおばさん…。ぼくはそんな人たちの愛に包まれて…支えられて、この子を産むことが出来たんだ。…ぼくは望まれない子供だったから…母さんは誰も周りに味方になってくれる人がいなくて、後ろ指さされながらぼくを産んで…育ててくれたから…、子供を産むことが…こんなに幸せな事だったなんて…想像もつかなかった」
―ありがとう…アレクセイ。ぼくにこんな幸せな人生をもたらしてくれて…。

それ以上言葉にならなかった。彼女はアレクセイの腕の中で、こみ上げる嗚咽を抑えるように両手で口元を抑え肩を震わせている。両の碧の瞳からは涙がとめどなく零れ落ちる。

―こいつは、生まれてから今日までの間…、一体何度こうやって声を押し殺して一人で泣いていたんだろう…。

声を押し殺して肩を震わせながら静かに涙を流すそんな妻のか細い身体を、アレクセイはギュッと抱きしめて耳元で囁いた。

「いいよ。俺の前では声を出して泣けばいいさ。我慢するなよ、もう」

アレクセイのその言葉に、ユリウスは―まるで今までの人生の分も、堰を切ったように、声を上げて小さな子供のように泣き出した。

うわぁぁん~~~~~!!

…ヒックヒック…。
ひきつける程激しく泣き続ける、一児の母となったとは言え、まだ少女独特のあどけなさが色濃く残る妻の身体を、アレクセイは彼女の感情が鎮まるまで、ずっとずっと優しく抱きしめて、細い背中を、柔らかな髪を撫で続けた。

「…俺の方こそありがとうな。父親を知らない俺に…父親になる幸せをもたらしてくれて。あのミモザの香る夜に…お前の手を離さなくて本当に良かった。俺と人生を共にしてくれて…ありがとうな」

―愛してる。

最後に聞こえるか聞こえないかの密かな声で囁くと、アレクセイはユリウスの金の頭に、額に、両の瞼に、鼻先に、そして最後に柔らかな唇にキスをした。
作品名:7 家族 作家名:orangelatte