7 家族
「お帰りなさい」
何日にも及ぶ任務にやっとけりがつき、臨月の妻の様子にヤキモキしながら韋駄天の如くアパートに戻って来たアレクセイを―、妻の輝くような笑顔と、生まれたばかりのまるで天使のような赤子が迎えた。
「ユリウ…、いや、ユリア…」
出産という大仕事を終えて、内側から滲み出るような自信と充実感に満ちて光り輝くような美しさを湛えた妻と、その傍らに眠る自分と同じ亜麻色の髪の赤ん坊に、アレクセイは引き寄せられるように歩み寄り、ベッドに上体を起こして座っている妻の白い頬を優しく撫でた。
「二人の時は…ユリウスと呼んで…」
自分の頬に置かれた夫の手を両手で包み込んでユリウスが呟いた。
―お帰りなさい、あなた。…無事に帰ってきてくれて…よかった。
囁くようにそう言って、ユリウスは夫の背中に細い両腕を回した。
― 抱いてあげて。あなたの息子だよ。
目覚めた息子をユリウスから手渡される。
アレクセイの手の中で息子の碧の瞳が若い父親の鳶色の瞳と合う。
「お前とそっくりの…碧の瞳。…ドミートリィ…」
生まれる前から「もし生まれた子が男の子だったら…」と二人で決めていた名前を腕の中の息子にそっと呼びかけた。
作品名:7 家族 作家名:orangelatte