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8 ある一日

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「あれ?アレクセイと、アルラウネも!帰ってたんだね‼ お帰りなさい。お疲れ様でした。…今から夕御飯の支度をするからね」

ユリウスが息子と籠を抱えてアパートに戻ると、珍しく夫のアレクセイと、義姉のアルラウネが揃って帰宅していた。

「ただいま」

アレクセイが妻の懐に抱かれた息子ごと抱きしめ、キスの雨を降らせ、最後に柔らかな唇を啄んだ。

「お帰りなさい…。無事で良かった」
アレクセイの抱擁とキスを受けて、ユリウスの顔が母親の顔から、年相応の、少女の顔に戻る。

「ただいま。ユリウスこそお疲れ様。晩御飯の支度、手伝いましょうか?」
アルラウネの申し出に、
「ううん、大丈夫。ゆっくりして…、あ!じゃあ、晩御飯の支度の間、ミーチャを見てもらっていてもいい?」

ユリウスは抱っこ紐を外し、おくるみに包まった息子をアルラウネに手渡す。

「お安い御用よ。ミーチャ…ドミートリイ…。いい子ね。この子を抱くと、疲れも嫌な事も忘れるわ」

アルラウネに抱かれ、あやされたドミートリイが笑顔を浮かべる。

「ミーチャは、アルラウネが大好きなんだね。…いい笑顔しちゃって」

エプロンをかけたユリウスがアルラウネの腕の中で笑顔を浮かべている愛息の頰を優しく指でつつく。

「それは…やっぱりドミートリィだからじゃないのか?…何てったって、我が生涯の恋人だからな〜」

アレクセイがニヤリと笑ってアルラウネに目配せした。

「あらやだ!この子ったら。…聞いてたの?」

少し照れくさそうな、それでいて昔の思い出に心を馳せるような眩い表情を一瞬浮かべると、アルラウネは黒い大きな瞳でアレクセイを睨んで見せた。

「聞いてたんじゃなくて、聞こえちゃったんです!俺は耳がいいんだ」

そう言ってアレクセイは声を立てて、笑った。
その笑い声につられ、アルラウネも久しぶりに声を立てて、楽しそうに笑った。

キッチンで二人の笑い声を背中で聞きながら、ユリウスも小さく笑いながら夕食の魚をさばく。

夫と義姉、そして息子と自分、―この秋の夕刻のひと時が、四人の家族が笑い合った最後の時となるとは、ユリウスは、そしてこの場の誰もが、この時は知る由もなかった。
作品名:8 ある一日 作家名:orangelatte