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17 難題 ~ロストフスキーの憂鬱Ⅲ

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「あ!ユリアさん。あなたに届け者があるんだよ」

その日の夕方―。

仕事帰りのユリウスを、大家が呼び止める。

「え?私に ですか?」

「ええ、そうよ。後で取りに来て頂戴」

部屋にミーチャを置いて、ユリウスは自分宛だというその届け物を取りに大家の部屋を訪ねた。

大家が預かった木箱をユリウスに渡す。

その木箱には―、米や麦といった穀類や、青菜や果物、それに缶入りのハーブティが入っていた。

「一体誰から…だろう?」

「さあ…。このへんで駄賃を貰って使いっ走りをしている子供が届けてくれたものだから…。送り主がどんな人間だったかも分からなくて…」

「なんか…不気味だなぁ」

「でもさ、米も麦も…それに野菜や果物も毒を入れられるようなものではないし…。ハーブティも…不安だったらさ、ここで一回淹れてみたらどうだい?」

「いいですか?」

「ああ。いいとも。お相伴に預からせてもらうけれど…いいかい?」

「はい。勿論」

大家はお湯を沸かし、毒見をすべくそのお茶をカップに注いだ。

二客のカップからハーブの爽やかな香気が湯気と共に立ち上る。

「…いただきます」

大家とユリウスが神妙な顔で、そろそろとカップに口をつける。

「おいしい!」

「これは…ただのフェンネルとレモングラスのハーブティだと思うよ」

ハーブティを賞味した大家も太鼓判を押した。

「じゃあ、今日は荷物を預かってもらって…ありがとうございました」

ユリウスは木箱を抱えて大家に挨拶する。

「こちらこそ。ハーブティのお相伴に預からせてもらったばかりじゃなく…こんなにおすそ分けまでしてもらって…」

「荷物を預かってもらったのと…毒見のお礼に」と、ユリウスにその木箱の中身の食糧を分けてもらった大家が礼を言われて恐縮する。

「誰からか分からないのはちょっと気持ち悪いけど…。食糧事情も厳しいこんなご時世だ。ありがたくその贈り主の好意に甘えるといいよ。…早く帰って坊やに美味しいものつくっておあげ」

「はい。そうします」
―では、おやすみなさい。

ユリウスが大家の部屋を後にして、木箱を抱え自室に戻っていくその一部始終を…向かいの雑居ビルの非常階段から―、ロストフスキーが見ていた。