19 夢の一夜~今宵おまえと・・・
「ええ?」
仕事を終えたユリウスが部屋に帰って来ると、ドアの足元にいつもよりも二回りほど大きな箱が置いてあった。背中で眠るミーチャをそっとベッドに下ろし、箱を押しながら室内に入れ中を開けてみる。今日は中に更にもう一つ平たい箱が入っており、その下にはいつものように食糧品があった。
「どなたか存じませんがありがとう。ん?これ...」
この「善意の箱」が届くようになった当初は疑問が先に立ち、訝しさから素直に喜ぶことができなかったユリウスだったが、幼子を抱え日々ギリギリにも満たない状況での暮らしで、目の前の必需品を無駄にすることなどできるはずもなく・・・いつの間にか箱を開けながら感謝の言葉を口にするのが恒例となっていた。
そして今日は、初めての品がまぎれているのに気付いた。
「口紅だ・・・」
ユリウスの白い肌と碧い瞳に映えそうなブルーローズ系の色味だ。首を傾げながら、上にあった箱も開けてみると...。
「な...これ!」
それは、今の季節にあちこち咲くリラの花と同じ色のドレスだった。
胸元から高めの襟に向かって施されたレースと細い藍色のリボン以外は大袈裟な装飾のないシンプルなラインのそれは、ユリウスの好みにぴったりと合っているように思えた。
しばし見とれそっと手に取ってみると一枚の封筒が膝の上に落ち、中を確かめる。
---チケット?【こうもり~ヨハン・シュトラウス*一般桟敷席B】オペレッタの⁉どういうこと?これって...来週じゃないか!
狐につままれたような気分で、ただドレスとチケットを見比べるばかりのユリウスなのであった・・・。
仕事を終えたユリウスが部屋に帰って来ると、ドアの足元にいつもよりも二回りほど大きな箱が置いてあった。背中で眠るミーチャをそっとベッドに下ろし、箱を押しながら室内に入れ中を開けてみる。今日は中に更にもう一つ平たい箱が入っており、その下にはいつものように食糧品があった。
「どなたか存じませんがありがとう。ん?これ...」
この「善意の箱」が届くようになった当初は疑問が先に立ち、訝しさから素直に喜ぶことができなかったユリウスだったが、幼子を抱え日々ギリギリにも満たない状況での暮らしで、目の前の必需品を無駄にすることなどできるはずもなく・・・いつの間にか箱を開けながら感謝の言葉を口にするのが恒例となっていた。
そして今日は、初めての品がまぎれているのに気付いた。
「口紅だ・・・」
ユリウスの白い肌と碧い瞳に映えそうなブルーローズ系の色味だ。首を傾げながら、上にあった箱も開けてみると...。
「な...これ!」
それは、今の季節にあちこち咲くリラの花と同じ色のドレスだった。
胸元から高めの襟に向かって施されたレースと細い藍色のリボン以外は大袈裟な装飾のないシンプルなラインのそれは、ユリウスの好みにぴったりと合っているように思えた。
しばし見とれそっと手に取ってみると一枚の封筒が膝の上に落ち、中を確かめる。
---チケット?【こうもり~ヨハン・シュトラウス*一般桟敷席B】オペレッタの⁉どういうこと?これって...来週じゃないか!
狐につままれたような気分で、ただドレスとチケットを見比べるばかりのユリウスなのであった・・・。
作品名:19 夢の一夜~今宵おまえと・・・ 作家名:orangelatte