19 夢の一夜~今宵おまえと・・・
「せっかくの楽しみを...邪魔をしたな」
「ううん...こんな初めての場所で、一人で観るより良かった...さよなら」
「待て...馬車が来る、のってゆけ」
「!?結構です、歩いてきましたから...」
「子供が待っておるのだろう?・・・だいいち、夜更けにそのような姿の女の一人歩きなど、襲ってくれと言っておるようなものだ。案ずるな、私は別の馬車だ」
「・・・ありがとう」
去り際の背中におずおずと発せられたソプラノの礼が届くと、ボルサリーノを目深にかぶりなおしフッと小さく微笑んだ。
そして帰路の馬車の中でレオニードは気づく。
ここ数日の激務でささくれ立っていた心がいつのまにか癒されていたことに・・・。
作品名:19 夢の一夜~今宵おまえと・・・ 作家名:orangelatte