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20 オペレッタif ~レオ様が途中で退出編

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二度目の休憩の幕間―

桟敷席でオペレッタ「こうもり」を鑑賞していたユリウスは、その高揚感さめやらず、興奮に頬を僅かに紅潮させ、小さな声でアデーレのアリアを口ずさむ。

  Die Hand ist doch wohl gar zu fein, ah,
  手は、ほら!こんなに華奢だし

そんなユリウスの様子に、二幕目から隣で鑑賞していた紳士がクスリと小さな笑みを漏らした。

つい楽しくて口ずさんでしまったユリウスは、隣の紳士のその「クスリ」に、手に持っていた扇子で顔を隠して思わず俯いた。

「いえいえ、そんな畏まらず。とても綺麗な声でしたよ。―今日のアデーレも色を失うぐらいにね」
―どうぞ、顔を上げてください

その―、細面で細い縁の眼鏡をかけた身なりのよい紳士は、真っ赤になってうつむいたユリウスにそう言って、彼女の顔を上げさせた。

「…つい楽しくって…。恥ずかしい…」

「それが正しいオペレッタの楽しみ方ですよ。お嬢さんみたいに作品を楽しんでもらえて、きっと今日の出演者も…歌手冥利につきますよ。…まったく昨今の劇場は…単なる社交の場と化してしまっているからな…」
―だから私は、ここで、桟敷で鑑賞するんだ。
そう言ってその紳士はユリウスに片目をつぶって見せた。

「ムッシュウは…音楽に詳しそうですね」
「ああ…。そうだね。私も音楽の道を志しているから」
「なんの楽器を?」
「私は作曲です」
「そうですか…」
「お嬢さんは歌をやられていたのですか?―とても美しい声だった」
「…いえ。でもピアノを学んでました」
「そう」

―あ、失礼。まだ名乗っておりませんでしたね。私はイーゴル。イーゴル・ストラヴィンスキー。現在リムスキー・コルサコフ先生について、作曲を学んでいます。