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21 もう一つの窓の運命Ⅰ

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「…君の事を…あれからの君の事を聞いても…いいかな?」

ヘルマンの腕の中でレナーテがあの頃の自分、そして別れてからの人生を語り始める。

―許して、ヘルマン。あなたをだますつもりはなかったのだけど、あの頃―出会った頃私は、既にアルフレート・フォン・アーレンスマイヤの囲われ人で、―ユリウスを身籠っていたの。私はその事をどうしてもあなたに言えなくて…、こんな私の事をあなたに知られたくなくて、―お腹が大きくなる前に貴女の前から姿を消した。それから私は結局―、アルフレートにも捨てられて…あの子が、ユリウスが14になるまでフランクフルトであの子を一人で育ててきたの…。病床のアルフレートがあの子の存在を知って…私達母娘をフランクフルトから呼び寄せたのは…今から一年前よ。―まさかあなたが、まだ…独身で、この街で暮らしていたなんて!

ごめんなさい、ヘルマン。あなたの人生を私はめちゃくちゃにしてしまった…

そう言って自分の腕の中で泣きじゃくる恋人の頬を両手で包むと、ヘルマンはその白い額に、昔のようにそっと口づけた。

「ぼくの人生は―、なにもめちゃくちゃになっていない。…またこうして君と出会えた」
レナーテの両の頬を包んだまま上を向かせて、今度はその―長い時間狂おしい程に求めてやまなかった恋人の唇を激しく吸い寄せた。

―愛するレナーテ。…また会ってくれるね。

激しい口づけのあと、身体が折れる程強く抱きしめられて耳元で囁かれたその言葉に、レナーテは、無言でコクリと首を縦に振った。

― もう…、もう後戻りできない…。ごめんなさい…ご、めんな、さい…。

愛しい恋人の腕の中でレナーテは心の中で何度もその言葉を繰り返した。
―その言葉が、誰に向けて発せられたものかは、レナーテ自身にも分からなかったが。