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28 ロストフスキーの懊悩

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離れの入り口のポーチで独り密かに苦悩しているロストフスキーの横を、リューバという小生意気な女警護が早足で横切り、その横切りざま目だけをロストフスキーの方に向け、「フッ」と鼻で笑った。

「何が可笑しい」

「別に…中に入って待てばいいではないか。侯とて…そんな外で待機しろとは言っていない筈だ。」

侯とあの娘が一緒にいるのを見たくなくて、侯とあの娘が笑い合っている声を聞きたくなくて、わざと二人から目の届かない場所で控えているというのに。分かっていてわざとその事を指摘するこの女の―女特有の底意地の悪さにロストフスキーは珍しく苛立ちを僅かに顔に表した。

「なんだ?男の嫉妬か?おぉ~コワ!」

リューバはヒュゥっと短く口笛を吹き両手を軽く挙げて馬鹿にしたようにロストフスキーを一瞥すると、彼が何か言い返そうとする前に離れの建物の中に足早に消えて行った。