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永遠にともに 1

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1年戦争終結から3年余りが経過し、アクシズでの生活も大分落ち着いてきた頃、突然その報告がシャアの元に届いた。
「連邦からの亡命者だと?」
地球圏から遠く離れたこのアクシズに敵軍であった連邦から亡命してくるなど正気の沙汰では無い。
「一体何者だ?」
シャアの質問に諜報部局長のキグナンが少し戸惑いながら答える。
「連邦のオーガスタ研究所の研究員でアーネスト・フォースという男です。」
「オーガスタ研究所?」
「はい。以前アムロ・レイの捜索で潜入を試みたものの厳重な警備に潜入を諦めたあの研究所です。」
「ほう…。それでその男は何故アクシズに亡命などしてきたのだ?」
アムロ・レイの名にシャアの眉が少し上がる。
連邦の白い悪魔と呼ばれたニュータイプの少年。16歳という若さで連邦のモビルスーツ“ガンダム”を駆り、多くのジオン兵を死に追いやった悪魔。終戦後、連邦政府に英雄として担ぎ出され、しばらくはメディアに取り上げられていたが1年も経たずにその姿を潜め人々の前から姿を消した英雄。
「それが…、連邦政府がニュータイプ研究所を設立する事になったのですが、その研究方針などで研究者達の間で対立があり研究所離れたそうです。」
「研究者と言うのはどこも似たようなものだな。」
シャアはため息まじりに呟く。過去にミノフスキー博士も連邦からジオンへ亡命してきた。しかしその後彼は殺害されてしまった。
「当然トップシークレットに関わった人間を野放しにはできないと連邦政府に命を狙われる事になった為、連邦政府の手の届かないジオンへ亡命してきたそうです。」
「なるほどな…。」
「それから…。」
キグナンは少し戸惑いながら言葉を止める。
「どうした?他にも何かあるのか?」
シャアの問いにキグナンは重い口を開く。
「アーネスト・フォースは亡命の際に研究所内の被験体を持ち込んできました。」
「被験体?」
「はい、検体ナンバー001 "アムロ・レイ"です。」
キグナンのその言葉にシャアは息を止める。
「何…?今、何と言った?」
「アーネスト・フォースはジオンへの手土産として研究所に幽閉していたアムロ・レイを“持って”来ました。」
キグナンのその言い回しにシャアが眉をしかめる。
「アムロ・レイを"持って来た”?」
「はい、その目で御覧になっていただくのが一番早いかと思います。」
シャアはキグナンに連れられ研究員が乗って来た小型艇へと案内される。
小さな機体はまだ起動した状態で動力が働いている。機内へと入り、操縦席の反対側にある扉を開けた。
そこには人が1人入れるほどのカプセルが置いてあり、ケーブルやダクトが機体へと繋がっている。小型艇が起動していたのはこのカプセルに動力を供給する為だろう。
シャアは意を決してそのカプセルの元へと歩みを進め、その中を確認する。そして暫し息を止めた。
その中には戦時中よりも少し成長した癖のある赤茶色の髪の少年、"アムロ・レイ”が眠っていた。検査着に身を包み、頭や首、手首などから伸びた線や管に繋がれ、口元には酸素供給の為のマスクがはめられている。
「間違いない…。アムロ・レイだ…。」
カプセル内を見つめたままシャアがその名を呼ぶ。
「彼は一体どう言う状態なのだ?」
「半冷凍睡眠状態だと言う事です。」
「半冷凍睡眠?」
「はい、体温を極限まで下げ生命活動を維持しています。彼はこの状態で研究所内に“保管”されていたそうです。」
シャアの拳が怒りで震える。
かつて命をかけて戦った好敵手であるニュータイプの少年がまるで物の様に扱われていた事に怒りが込み上げる。
「オーガスタ研究所でニュータイプ研究の被験体として様々な実験をされていたそうです。そして、被験体としての役目が終了した後は逃亡を防ぐ為この様に保管していたと…。」
シャアの怒りが頂点に達しその拳を壁に叩きつける。
「何と言う事だ…。連邦にとっては戦争を勝利に導いた英雄だろうに…。」
キグナンは暫し口を閉ざし、カプセル内で眠る“アムロ・レイ”に目を向ける。
そして英雄のその哀れな姿に眉をしかめる。
ーーー今、19歳か…。しかし冬眠状態で成長を止められたその身体は実年齢よりもかなり幼い。こんな少年を戦争の最前線で戦わせ、その上実験体として非道な実験を繰り返し、用済みとなった後はこの扱い…。連邦は一体何を考えているのか…。
「キグナン。アムロ・レイを蘇生させる事は可能か?」
シャアの言葉に思考に耽っていた顔を上げる。
「はい、アーネスト・フォースに協力して貰えばこちらの医療スタッフで蘇生は可能です。」
「分かった。では、蘇生処理を手配してくれ。
それからこの事は極秘扱いとしろ。アムロ・レイの存在はジオン内ではタブーだからな。」
「はい、直ちに手配します。それから大佐、アーネスト・フォースについては如何しますか?」
シャアは少し考え、眠るアムロに視線を送る。
「とりあえず、アムロの蘇生が完了するまでは生かしておく。その後は状況に応じてだが始末しろ。」
状況はどうあれ、アムロをこんな状態にした研究者を許す事は出来なかった。


シャアの屋敷の一角を病室へと整備し、そこに数名の医師とアーネスト・フォースが泊まり込み、アムロ・レイの蘇生処理を施していく。
長期にわたる半冷凍睡眠状態と非道な人体実験はアムロの身体を弱らせ、内臓機能、運動機能ともにかなり低下させてしまっていた。
体温は健常者のそれに戻ったものの、1ヶ月が過ぎた今も目覚めることがなかった。
「アムロ・レイの様子はどうか?」
病室へと足を運んだシャアが医師に尋ねる。
「体温は平常に戻りました。バイタルも問題はありません。そろそろ目を覚ましても良い頃なのですが…何分にも身体の各機能が弱っておりますので…。」
「冷凍睡眠状態とはそこまで身体機能を低下させてしまうものなのか?」
シャアの問いに連邦の研究者、アーネスト・フォースが答える。
「冷凍睡眠でここまで身体機能を低下させる事はありません。アムロ・レイのこの状態は過酷な人体実験によるものです!」
アーネストは髪を搔きむしりながら苦悶の表情を浮かべる。
「あそこの研究者達はみんな狂っていた!こんな少年に無茶な投薬や体に負荷をかけたり!戦場での辛い記憶を何度も体験させて!最終的に彼は心を閉ざしてしまった!」
シャアはアーネストの言葉に驚きを隠せない。
アムロ・レイは戦後どの様に過ごしてきたのか…。あの時ア・バオア・クーで無理やりにでも攫うべきだったのか?そんな事が頭をよぎった。
「ニュータイプ研究所を設立するにあたり、アムロ・レイの処遇について検討する事になりました。何も反応を返さなくなり被験体として利用価値の無くなった彼を処分する意見が出始めたのです。おそらく、英雄である彼をこんな状態にしてしまった事が明るみになる事を恐れたのでしょう。病死に見せかけて処分する流れになって…。僕は堪らなくなり、彼を研究所から連れ出しました。」
アーネストは眠るアムロの頬に手を当てる。
「彼は実験動物ではなく暖かい血の流れる人間なのに!」
アーネストの瞳には涙が滲む。
作品名:永遠にともに 1 作家名:koyuho