永遠にともに 2
シャアは連邦への潜入捜査及び反連邦組織との接触を目的として、地球圏へ向かう事の許可を得る為ハマーンの元を訪れた。
「どうしても偵察に行く必要があるのか?シャア」
「はい。地球圏でのスペースノイド独立運動の把握はアクシズが地球圏帰還を果たした時に必要となります。」
「出来る事ならばお前にはずっと側にいてもらいたいのだ。いけないか?」
「これはアクシズだけではなくジオン再興の為でもあるのです。」
「シャア……少し私に考える時間をくれ」
「勿論構いません。では、失礼します。」
シャアが部屋を出て行くとハマーンは溜め息を吐き頭を抱える。
『シャアの言ってる事が正しい事は分かっている。しかし、個人的な思いとして離れて欲しくない…。』
ハマーンは己に架けられた重圧に潰されそうな心を必死で支える。
シャアの屋敷を訪れたアンディとリカルドが使用人に案内されてリビングへ行くと庭から愛犬を呼ぶアムロの声が聞こえた。
「ルシファ!こっちだ!」
庭を見るとアムロはタンクトップにジーンズといったラフな格好で大型犬と戯れていた。
「おう!アラン。頼まれてたの持ってきたぞ!」
「あ!アンディさん、リカルドさんいらっしゃい!」
アンディ達はアムロの居る庭に降りるとガーデンチェアに腰掛ける。
そのラフな服装の所為かルシファと戯れるアムロは今年22歳になるとは思えないほど若く見える。
「まだ全然10代で通るな。」
「何か言いましたか?リカルドさん!」
「うんにゃ。何も。それより頼まれてた工具一式とペットロボットの中古持ってきたぞ。」
リカルドはガーデンテーブルの上に持ってきた工具箱と昔に流行った“ハロ”と呼ばれるペットロボットを置く。
「ありがとうございます!!」
アムロの弾けんばかりの笑顔に2人はクラリとする。
『こりゃ大佐じゃなくてもイチコロだな』
2人は冷や汗を掻きながら使用人に運ばれたアイスコーヒーをすする。
「こんなのどうするんだ?」
「ん〜?これから長旅に出るのに暇つぶしが欲しくて」
「!?やはり大佐は地球圏へ偵察に行くのか?」
アンディが身を乗り出してアムロに尋ねる。
「うん。今、ハマーン様のトコに許可を貰いに行ってます。」
「そうか!俺たちも是非同行したいと大佐に伝えてくれ!」
「君たちには勿論同行して貰う。連邦の偽造IDも作成済みだ。」
いつの間に帰ってきたのかシャアがリビングから現れた。
「大佐!お邪魔しております。」
2人はシャアに体を向け敬礼する。
シャアは胸ポケットから作成されたばかりの偽造IDをアンディとリカルドに手渡す。
「連邦軍中尉 アポリー・ベイですか。」
アンディが偽造IDを見て呟く。
「自分はロベルトですか。まぁ、まぁですね。」
リカルドも自分のIDカードを眺めてふふんと笑う。
「アムロの分もあるぞ。」
アムロのIDには“アムロ・レイ”と本名が明記してあった。
「シャア?どういう事?アラン・マスじゃないのか?」
「君の連邦軍籍はまだ残っていたのでな、そのまま使用した。」
「そんな…。大丈夫なのか?」
「我々が潜入するのは反連邦組織エゥーゴだ。連邦政府の管轄外になるから問題無い。」
「はぁ…。でも他にも一緒に潜入するジオン兵がいるんだし、その連中にバレたら厄介じゃないか?」
「今回同行するのは私と同じ志しを持つものばかりだ。それにこの数年で君が築き上げた人脈は本物だ。」
「そうだな。訓練生やメカニック連中の中にはアランのファンクラブもあるぞ」
「はぁ?何言ってるんですか、リカルドさん」
「本当だって!なぁ!アンディ」
「まぁ…な」
シャアの視線が痛い。『大佐…独占欲強過ぎです』
「ほら!本当だろう?」
シャアの絶対零度の視線に気付かず話題を振るリカルドに眩暈をおぼえつつ、アンディは必死に殴りたい衝動を抑えた。
「そ、それよりアラン。その肩の傷痕結構デカイな?どうしたんだそれ?」
アンディはとりあえず話題を変えたくて、アムロのタンクトップの肩から見える傷痕について聞いてみた。
「え?ああ。これは1年戦争の時に白兵戦でシャアにやられた時のだよ。」
「大佐に!?」
「うん。フェンシングの剣みたいなのでブッすり刺された。すっごく痛かったんだよね〜。」
「何を言う。私の額の傷のがもっと痛かった。」
「えっ?大佐のその傷はアランが!?」
シャアはスクリーングラスを外し前髪を搔き上げる。
「そうだ。ヘルメットが無ければ即死だったな。」
その答えにアンディが固まる。
『あの大佐と互角以上の戦いをしたって言うのか!?』
目の前のアムロを驚きの目で見つめる。
…すると、シャアがアムロを後ろから抱きしめその肩の傷痕にキスをする。
「これは私とアムロの絆の証だ。」
目の前でイチャコラし始める2人を見てアンディはリカルドを連れて速攻で逃げ出した。
「では大佐!詳細が決まりましたら連絡をお願いします。失礼します!!」
「了解した。」
不敵な笑みを見せるシャアにアムロが疑問の声を上げる。
「アンディさんとリカルドさん、あんなに慌ててどうしたんだ?」
そんなアムロに溜め息をつくと首筋にキュッと吸い付く。
「痛っ!何?」
「何でもない。君はもう少し自分の魅力を自覚したまえ。」
「はぁ?シャアまで何言ってんの?」
シャアは「はぁぁ」と大きな溜め息を吐くとアムロを抱きしめる。
そのアムロの首筋にはくっきりとキスマークが浮かんでいた。
『私のモノには印を付けておかねばな』
数日後、地球圏への偵察計画が正式に受理された。
アムロが荷造りをしていると来客を知らせるインターフォンが鳴る。
使用人に案内され姿を現したのはハマーンだった。
「え?ハマーン様!?どうしたんですか?」
アムロは慌てて姿勢を正しいハマーンを迎え入れ、ソファへと案内する。
「あ、もしかしてシャアに用事ですか?すみません。今、出掛けてしまってて…夕方まで帰らないんです…。」
「分かっている。私はアランに会いにきたのだ。」
「僕に?」
アムロはハマーンから寂し気な思惟を感じて眉をひそめる。
「アラン……いや、アムロ・レイ…」
「!!!?」
アムロはハマーンの口から出た己の本名に目を見開く。
「やはり、そうなのだな。父の残してくれたデータの中にアランの事が書いてあったからどうしても確かめたくて…。」
アムロは腹をくくると、ハマーンの向かい側のソファに座って向き合う。
「それに一番初めにアムロと共感した時、連邦の青い制服を着たアムロの姿と白いモビルスーツが見えた…」
「そうですか…。」
「お前がアクシズに来た経緯も報告書にあった。それでもお前はシャアと共に連邦に行くのか?」
アムロは目を閉じると小さくコクリと頷く。
「はい。シャアを側で支えると…永遠にともにいるとあの人に誓いましたから。」
「そうか…お前も私の側には居てくれないのだな。」
寂し気に言うハマーンに胸が締め付けられる。
「あの人は…とても強いけど…。壊れやすいから…。誰かが側で支えないといけない。おそらくあの人のニュータイプ能力はとても強い。けれど生まれ持った頭脳や才能、身体能力がずば抜けているせいで表面化していない。」
「どう言う事だ?」
「どうしても偵察に行く必要があるのか?シャア」
「はい。地球圏でのスペースノイド独立運動の把握はアクシズが地球圏帰還を果たした時に必要となります。」
「出来る事ならばお前にはずっと側にいてもらいたいのだ。いけないか?」
「これはアクシズだけではなくジオン再興の為でもあるのです。」
「シャア……少し私に考える時間をくれ」
「勿論構いません。では、失礼します。」
シャアが部屋を出て行くとハマーンは溜め息を吐き頭を抱える。
『シャアの言ってる事が正しい事は分かっている。しかし、個人的な思いとして離れて欲しくない…。』
ハマーンは己に架けられた重圧に潰されそうな心を必死で支える。
シャアの屋敷を訪れたアンディとリカルドが使用人に案内されてリビングへ行くと庭から愛犬を呼ぶアムロの声が聞こえた。
「ルシファ!こっちだ!」
庭を見るとアムロはタンクトップにジーンズといったラフな格好で大型犬と戯れていた。
「おう!アラン。頼まれてたの持ってきたぞ!」
「あ!アンディさん、リカルドさんいらっしゃい!」
アンディ達はアムロの居る庭に降りるとガーデンチェアに腰掛ける。
そのラフな服装の所為かルシファと戯れるアムロは今年22歳になるとは思えないほど若く見える。
「まだ全然10代で通るな。」
「何か言いましたか?リカルドさん!」
「うんにゃ。何も。それより頼まれてた工具一式とペットロボットの中古持ってきたぞ。」
リカルドはガーデンテーブルの上に持ってきた工具箱と昔に流行った“ハロ”と呼ばれるペットロボットを置く。
「ありがとうございます!!」
アムロの弾けんばかりの笑顔に2人はクラリとする。
『こりゃ大佐じゃなくてもイチコロだな』
2人は冷や汗を掻きながら使用人に運ばれたアイスコーヒーをすする。
「こんなのどうするんだ?」
「ん〜?これから長旅に出るのに暇つぶしが欲しくて」
「!?やはり大佐は地球圏へ偵察に行くのか?」
アンディが身を乗り出してアムロに尋ねる。
「うん。今、ハマーン様のトコに許可を貰いに行ってます。」
「そうか!俺たちも是非同行したいと大佐に伝えてくれ!」
「君たちには勿論同行して貰う。連邦の偽造IDも作成済みだ。」
いつの間に帰ってきたのかシャアがリビングから現れた。
「大佐!お邪魔しております。」
2人はシャアに体を向け敬礼する。
シャアは胸ポケットから作成されたばかりの偽造IDをアンディとリカルドに手渡す。
「連邦軍中尉 アポリー・ベイですか。」
アンディが偽造IDを見て呟く。
「自分はロベルトですか。まぁ、まぁですね。」
リカルドも自分のIDカードを眺めてふふんと笑う。
「アムロの分もあるぞ。」
アムロのIDには“アムロ・レイ”と本名が明記してあった。
「シャア?どういう事?アラン・マスじゃないのか?」
「君の連邦軍籍はまだ残っていたのでな、そのまま使用した。」
「そんな…。大丈夫なのか?」
「我々が潜入するのは反連邦組織エゥーゴだ。連邦政府の管轄外になるから問題無い。」
「はぁ…。でも他にも一緒に潜入するジオン兵がいるんだし、その連中にバレたら厄介じゃないか?」
「今回同行するのは私と同じ志しを持つものばかりだ。それにこの数年で君が築き上げた人脈は本物だ。」
「そうだな。訓練生やメカニック連中の中にはアランのファンクラブもあるぞ」
「はぁ?何言ってるんですか、リカルドさん」
「本当だって!なぁ!アンディ」
「まぁ…な」
シャアの視線が痛い。『大佐…独占欲強過ぎです』
「ほら!本当だろう?」
シャアの絶対零度の視線に気付かず話題を振るリカルドに眩暈をおぼえつつ、アンディは必死に殴りたい衝動を抑えた。
「そ、それよりアラン。その肩の傷痕結構デカイな?どうしたんだそれ?」
アンディはとりあえず話題を変えたくて、アムロのタンクトップの肩から見える傷痕について聞いてみた。
「え?ああ。これは1年戦争の時に白兵戦でシャアにやられた時のだよ。」
「大佐に!?」
「うん。フェンシングの剣みたいなのでブッすり刺された。すっごく痛かったんだよね〜。」
「何を言う。私の額の傷のがもっと痛かった。」
「えっ?大佐のその傷はアランが!?」
シャアはスクリーングラスを外し前髪を搔き上げる。
「そうだ。ヘルメットが無ければ即死だったな。」
その答えにアンディが固まる。
『あの大佐と互角以上の戦いをしたって言うのか!?』
目の前のアムロを驚きの目で見つめる。
…すると、シャアがアムロを後ろから抱きしめその肩の傷痕にキスをする。
「これは私とアムロの絆の証だ。」
目の前でイチャコラし始める2人を見てアンディはリカルドを連れて速攻で逃げ出した。
「では大佐!詳細が決まりましたら連絡をお願いします。失礼します!!」
「了解した。」
不敵な笑みを見せるシャアにアムロが疑問の声を上げる。
「アンディさんとリカルドさん、あんなに慌ててどうしたんだ?」
そんなアムロに溜め息をつくと首筋にキュッと吸い付く。
「痛っ!何?」
「何でもない。君はもう少し自分の魅力を自覚したまえ。」
「はぁ?シャアまで何言ってんの?」
シャアは「はぁぁ」と大きな溜め息を吐くとアムロを抱きしめる。
そのアムロの首筋にはくっきりとキスマークが浮かんでいた。
『私のモノには印を付けておかねばな』
数日後、地球圏への偵察計画が正式に受理された。
アムロが荷造りをしていると来客を知らせるインターフォンが鳴る。
使用人に案内され姿を現したのはハマーンだった。
「え?ハマーン様!?どうしたんですか?」
アムロは慌てて姿勢を正しいハマーンを迎え入れ、ソファへと案内する。
「あ、もしかしてシャアに用事ですか?すみません。今、出掛けてしまってて…夕方まで帰らないんです…。」
「分かっている。私はアランに会いにきたのだ。」
「僕に?」
アムロはハマーンから寂し気な思惟を感じて眉をひそめる。
「アラン……いや、アムロ・レイ…」
「!!!?」
アムロはハマーンの口から出た己の本名に目を見開く。
「やはり、そうなのだな。父の残してくれたデータの中にアランの事が書いてあったからどうしても確かめたくて…。」
アムロは腹をくくると、ハマーンの向かい側のソファに座って向き合う。
「それに一番初めにアムロと共感した時、連邦の青い制服を着たアムロの姿と白いモビルスーツが見えた…」
「そうですか…。」
「お前がアクシズに来た経緯も報告書にあった。それでもお前はシャアと共に連邦に行くのか?」
アムロは目を閉じると小さくコクリと頷く。
「はい。シャアを側で支えると…永遠にともにいるとあの人に誓いましたから。」
「そうか…お前も私の側には居てくれないのだな。」
寂し気に言うハマーンに胸が締め付けられる。
「あの人は…とても強いけど…。壊れやすいから…。誰かが側で支えないといけない。おそらくあの人のニュータイプ能力はとても強い。けれど生まれ持った頭脳や才能、身体能力がずば抜けているせいで表面化していない。」
「どう言う事だ?」