永遠にともに 2
「ニュータイプ能力というのは人がこの宇宙で生きて行くために、より早く危険を察知し、他人とわかり合う為に人が進化したものだと思うんです。だから僕は戦場で生き残る為に覚醒した。ハマーン様も様々な周りの状況から自分を守る為に覚醒したのだと思います。かつてあの人の側にいたララァ・スンも同じです。だから元々力のあるあの人には必要がなくて表面化しない。それに…あの人には心に迷いがあるからそれも大きな原因だと思います。」
「迷い?」
「はい。おそらく、ザビ家への復讐を成し遂げた後、自分の生きる意味を見失い。そしてマハラジャ様を知り、自分の小ささに情けなさを覚え自信を無くしたんだと思います。だから、マハラジャ様が求めるように本来の姿に戻りジオンを再興…スペースノイドの独立を樹立することに、二の足を踏んで一歩を踏み出せなかった。」
「あの、シャア大佐が…?」
「ええ、けれどサイド3の現状と先日の反乱を見て、スペースノイドの現状を憂い、反連邦組織の事を知り、ようやく一歩を踏み出す決意をしたのだと思います。」
ハマーンはアムロを見つめてその言葉に聞き入る。
「本当はもう少しハマーン様を支えるつもりでいたのだと思います。けれど反連邦組織が発足し、時代が動き始めてしまった。」
ハマーンの瞳が揺れる。
「そうか…。やはり私には大佐やアムロを引き止める事は出来ないのだな。」
「ハマーン様はシャアの事がお好きなんですよね?」
ハマーンは顔を上げ戸惑う。
「僕もです。貴女や僕、そしてララァ。あの人にはニュータイプを惹きつける何かがあるのかもしれませんね。」
「アムロ…?」
そしてふとアムロの首筋に紅い痕を見つける。
「アムロと大佐はそういう仲なのか?」
ハマーンの視線に気付いたアムロが首筋の痕を手で隠して戸惑う。
「あ…。すみません。男同士でこんな…軽蔑しますよね。それに貴女の気持ちも知っているのに…」
ハマーンは泣きそうなアムロの元に歩み寄るとアムロの顔に手をあて上向かせる。
そしてその唇に己のものを重ね優しくキスをする。
「ハマーン様!?」
「アムロ。私は力をつけ父のようにこのアクシズを掌握し、必ず地球圏へ帰還してみせる。その時にはシャア大佐とアムロの2人を私のモノにしてみせる!」
不敵な笑みを浮かべると席を立ち、扉へと歩き出す。そして振り向くとアムロを見つめて言う。
「私はアムロの事も好きだ。だから必ず2人を手に入れてみせる!」
その晴れやかな笑顔にアムロは暫し刻を止め魅入る。
「それでは、2人の無事な航海祈っている」
ハマーンは踵を返すと颯爽と部屋を後にした。
残されたアムロは唇に手を当てドサリとソファに沈み込む。
『女性は…強いな。』
顔を真っ赤にして暫くそのままハマーンの去った扉を見つめた。
U.C.0083年10月29日、シャア・アズナブルは船団を率いてアクシズを出立。地球圏へと向かった。
そのシャアの傍らには永遠にともにいると誓ったアムロが彼を支えその道を導いた。
end
2017.2.4