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34 Dinner2~それぞれの想い

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そして翌週末の晩ーーー先週の晩餐後の数日、レオニードにとって忙しい日々が続き、今日やっと離れを訪ねる時間を捻出したのだった。

―――あれ以来、ゆっくり顔を見ることもなかったな・・・淋しがっているだろう。

離れへの小道を進むと自然と表情は柔らかくなり、歩みも早くなっていく。

―――ん?

離れの方から、料理番のスチェパンが時々後ろを振り返りながらこちらに歩いて来る。

「どうした、スチェパン?」

「へー・・・ニ三日前に、今日の若様との晩餐は前菜だけ準備してくれたらいいとイゾルデ様が・・・」

―――そういうことか・・・しかし、まさか私に食べさせるつもりとは思わなかった。奴も食べていたであろう、ユリアの手料理・・・いや、今は考えないでおこう。あれは私のイゾルデ・・・今だけは・・・。

「若様?大丈夫でございますよ、イゾルデ様に頼まれた材料は失敗してもいいように多めに準備してございますし、ザクースカもボリュームのあるものを拵えましたので」

主人が夕食にありつけない心配をしているとでも思ったのだろう。スチェパンは「台所は譲っても、料理番の一人としてこのお屋敷の皆様の胃袋への責任は私にもありますからね」と少し胸を張り、母屋へ戻って行った。
離れの前に来ると、辺りはたしかにいつもとは違う匂いが漂っていた。しかしそれは、レオニードにとって、どこか懐かしい、幼い日の記憶に繋がっている気がした。

「あー!ダメだよ、ロストフスキーさん!沸騰したところに入れないとー。それにそれは、レオニードが来てから仕上げて熱々を出すの!」

「クク!この際よーく教わっておいたらどうだ?いつか愛しいお方に手料理が振る舞えるように?」

「好きな女性が?」

「リューバ、おまえー」

「女性なら、私の気苦労もなくなるのだがな~」

「リューバ!!」

―――ロストフスキー?

玄関横の狭い調理室の手前から聞こえたユリアの叫び声と、幼なじみの滅多に聞けない荒げた声を怪訝に思いながら、レオニードはその入り口に佇んだ。

「私なら来ているが?」

「レオニード!?びっくりした~おかえりなさい、久しぶりだね!」

目の前の状況に驚きながらも、ユリアが嬉しそうに駆け寄るのをレオニードは片腕で抱き寄せてやる。
そんな二人の様子に、ロストフスキーは眉間にしわ寄せながら視線を逸らせ、それを見たリューバはおかしそうに意地悪い笑みを浮かべている。

「ロストフスキー?リューバまで・・・これはいったい何事だ?」

ユリアが前掛けをし台所にいるのはともかく、「この二人」がここにいて、しかもどうやらユリアを手伝っているらしい状況に、さすがのレオニードも困惑を隠しきれない。

「・・・」
「・・・」

リューバはいたずらを見つけられた子供のように首をすくめ、その視線を受けたロストフスキーは、それ見たことかとじろりと睨み返す。

「ご、ごめんなさいレオニード。勝手なことをして・・・」

ユリアが慌てて間に入る。

「いや、スチェパンから事情は聞いているが・・・この二人はなぜだ?」

「それが・・・最初はボク一人で準備していたんだけど、もうちょっとのところで指先を切ってしまって・・・」