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43 夫の盟友

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1910年―

あの第一次ロシア革命から5年の歳月が流れた。

モスクワ蜂起に敗れ、シベリア送りになっていたフョードル・ズボフスキーは、仲間の尽力で脱獄に成功し、5年振りにこの懐かしい地、サンクトペテルブルクに戻って来た。

5年振りのペテルスブルグは相変わらず壮麗で美しく、そしてその裏側の市井には貧困が溢れていた。

― 変わらないな。この都も。

それは嬉しくもあり、同時に切なくもあった。

― この都を、この国を変えてみせる。ここから、これから俺はまた前進する。

この北の都に改めてフョードルは誓った。

《エカテリンブルグ通商》

この些か胡散くさい社名の貿易会社―、会社とは言ってもその実はボリシェビキのサンクトペテルブルクの一支部の隠れ蓑―、がフョードルの新しい所属先だった。

「やあ」

事務所に入って来たズボフスキーに、顔見知りの同志の面々が歓待する。

「ズボフスキーじゃないか!お前、よく戻って来たな!しぶといヤツだと思ってたが…。よく戻って来たなあ」

「はは。シベリアからしぶとく戻って来たよ。今日からここに世話になる。宜しくな」

「もちろんだ!こっちも相変わらず万年人手不足でよ!早速キリキリ働いて貰うぜ」

「シベリアへは…何年だ?」

「5年いたよ。仲間の尽力で拾った命だ。これからの人生は、国の為に使おうと誓った」

「そうか…。頼むぞ。同志」

「ああ」

久方ぶりに再会した同志たちと固く肩を抱き合う。

「アレクセイは…?」

「ヤツはまだ、シベリアだ。とある協力者の尽力で、どうやらアカトゥイに収容されている事が最近分かった。…次は、ヤツの番だ」

「ああ、そうだな」

フョードルの脳裏に、人懐こい明るい鳶色の瞳の、形ばかりは一人前に大きな、愛すべき年若の同志の姿が浮かんだ。

― あいつは…無事でいるだろうか。まだ20歳前の少年だった。待ってろよ。俺が必ず救い出してやるからな。

ズボフスキーがその瞼の奥に残る面影に向かって語りかけた。

「おーい。ユリア!」

同志の一人がユリウスを手招きする。

「ヤツは、フョードル・ズボフスキー。先日シベリアから脱出してきたばかりだ。色々案内してやってくれ。フョードル、彼女はユリア。ユリア・ミハイロヴァだ」

「ミハイロヴァ…⁈」

「…アレクセイ・ミハイロフの家内です。初めまして。夫がお世話になっていたようで」

ズボフスキーの目の前の、まだ少女のと大人の中間のような若い金髪の女性がにっこりと微笑んだ。

作品名:43 夫の盟友 作家名:orangelatte