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四畳半に、ちゃぶ台ひとつ

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 サンジが目を覚ますと、そこには見慣れた天井があった。サンジと――ゾロの、アパートだ。表ではパチンコ屋の呼び込みが、いつもの文句を高らかに叫んでいた。スズメの鳴き声。それに、隣の部屋の気狂い爺さんも。
 は、と、サンジは部屋を見回した。まずゾロの姿を見つけて、思わずほっと胸を撫で下ろす。どうやら生きているどころか充分に健康体らしい。布団も敷かず身体も血まみれのまま、ゾロは寝腐れている。
 そして――あの、においの出所。それは勿論、台所だ。そこに立っている背中を、サンジは目を細めて見つめた。
「起きたのか」
「……おう」
 それきり。ゾロの高いびきをBGMにして、ゼフとサンジは無言だった。
 2人分の料理を並べて精一杯の、小さなちゃぶ台。サンジが座ると、ゼフは当然のように料理を並べた。だし巻卵。焼き鮭。ナスの浅漬け。菜の花の味噌汁。それに、湯気を立てる白いご飯。
 食え、とは言わなかった。ただゼフは台所に立ったままサンジに背を向けて、ただ、無言だ。サンジも何も言うことなしに、そのまま箸を手に取った。ストン、と卵に箸を落とすと、柔らかなそれはまるで豆腐のように切れた。甘い味付け。いつもの味だ。
「ジジイ、俺さ」
 お椀で顔を隠すようにして味噌汁を啜りながら、サンジが小さく言った。ゼフは何も答えない。
 コトコトと鍋が鳴っている。
 あの朝にも、こんな音がしていた。
「あんたんとこで、はじめて目覚ました朝……あんた、味噌汁作ってたよな。あのにおいを吸い込んで、俺、思ったんだ」
 ――あいつに、ゾロに、こんな味噌汁、作ってやりてえって。
 鍋をかき混ぜていたゼフの手が、す、と止まった。
 椀の中身なんてとっくに飲み干してしまったのに、サンジはそれをちゃぶ台の上に置くことはできなかった。味噌の味が、口の中に残っている。豆腐の香りが、鼻の奥に残っている。そしてそれらは、きっと永遠にサンジの記憶の中で鮮明に生き続けることだろう。
 空っぽのお椀で顔を隠したまま、サンジはズ、と鼻を啜った。
「ジジイ、うめえよ。この味噌汁。クソうめえ。クソうめえよ……」