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44 もう一つの窓の運命Ⅱ

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「ヘルマン、これ―」

あの再会の日から約一月後、再びアーレンスマイヤ夫人―、レナーテ・フォン・アーレンスマイヤがヘルマン・ヴィルクリヒの元を訪れた。

レナーテが手にしているその手紙をヘルマンが覗き込む。

その手紙は、無記名で、文面はただ一言―。「ごめんなさい」とだけ書かれていた。

見覚えのある少し線の細い几帳面な文字。

「これは―」

「ユリウスの…、あの子の字だわ」

封筒には―、国境の街、パッサウの駅の消印が押されていた。

「ユリウスは…まさかドイツを出た…というのか?」
―だが、一体なぜ…。

突然の失踪から一か月。そして昨日届いたという国境付近の駅からの無記名の手紙。
その結論の導き出せない事実にヘルマンは首をかしげる。

「さっぱりわからないな…。レナーテ、もちろんアーレンスマイヤ家でも捜索はしているのだろう?」

「ええ…。でもヘルマン…。あの子は、ユリウス・レオンハルト・フォン・アーレンスマイヤは…もう存在してないかもしれない」
―お願い。私の言う事を…最後まで聞いていてもらえるかしら?

そう前置きして、レナーテはこれまでの経緯を―、そして息子と偽った―、その実は娘の事をヘルマンにすべて打ち明けた。