PEARL
PEARL -diary-
いつまで、私はこの日記を書き続けることができるだろうか。
「今夜が最後かもしれぬな……」
闇の意識に支配されぬほんの一時に書きしたためた想い。
誰にも打ち明けることもできぬ密やかな想いは膨らみを増すばかりだった。
小さな溜息とともにペンを置くと、窓へと顔を向ける。
静寂の闇に包まれた十二宮にはきっと星の光が満たされていることだろう。
立ち上がり、窓に身を寄せると僅かに見える処女宮をそっと指先でなぞる。
ただ、想うだけで心が満たされるなどという優しい感情ではなかった。
ずっと傲慢で生々しく、破壊衝動にも似た想い。
すべてを壊してしまうほどの激情。
この想いをぶつけたあとに、一体何が残るというのか。
残るものなど何ひとつないだろう。
ならば。
どれだけおまえを苦しませ、卑怯だと罵られたとしても。
どれだけおのれを痛めつけ、闇に呑まれることになっても。
凍りついた時の彼方で、おまえの孤独と共に私は―――。
「―――永遠になろう、シャカ」
闇夜に星がひとつ流れ落ちるのを見つめながら囁いたのち、サガはそっと窓から離れ、真白なページにペンを滑らせる。
ひとつしかない、大切な輝く命よ。
どれだけの奇跡を重ね、そこにあるのだろう。
堅く絡めた指先が解けることのないように
君の孤独を離したりはしない。
優しさよりも、痛みを願うように
癒すよりも、傷つける想いに焦がれ
身を削ぎ、心を削ぎ落とすように研磨され
暗闇でさえも輝くほどに
君への想いを抱き締める。
真珠の乙女よ
君はアコヤの殻の中
遠く深い海の底で
静かに微睡み続けるのだろうか。
小さな光を
暗闇の中で発しながら
いつか、きっと。
遠く深い海の底で
静かに微睡む君を
アコヤの殻から取り出して
逃れることの出来ない影のように
そっと君に寄り添い続ける――――