二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

53 レディ・リューバ

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 


「レオニード…頼みがある」

ユスーポフ家の嫡男レオニードの元に、供も付けずに単身馬に乗って幼馴染が訪問してきた。
いつも男装姿でレオニードと互角に馬を並べ、野を走り、剣を交えたその闊達な少女は―、長かった黒髪を肩上で切り揃えていた。

許嫁を失いながらも毅然と立ち、凛とした怜悧な顔で自分に対峙するこの幼馴染の少女は、悲しみのどん底から何かを完全に吹っ切って、何かを悟り、そして新しい一歩を踏み出し始めたのだと、一目見てレオニードは感じ取った。

「何だ?言ってみろ」

「私を…この家で雇ってほしい。…ヴェーラの…ヴェーラ様の護衛として私を警護役につけて欲しい」
― 私は結婚はしない。…だから打ち込める仕事が欲しいんだ。ヴェーラ様の護衛ならば、どこへもついて行ける女性の方が何かと便利であろう?―それに私は一応爵位を持っている。宮廷にだって護衛として上がることもできる。…どうだ?レオニード。

幼馴染のその覚悟のほどに、レオニードの黒い瞳が僅かに和らぐ。

「なるほど…。お前ならば、腕は立つし、貴族としての素養もマナーも持ち合わせている。ヴェーラの護衛としては適任だろう」
― 父上に、話しておくよ。

「それから…」

「それから?」

その先をやや言いずらそうにリューバは一瞬躊躇する。が、覚悟を決めたようにレオニードの黒い瞳を見つめて、先をつづけた。

「将来…私がもう少し成長して…子供が産めるような齢になったら…あなたの子種が欲しい。―レオニード・ユスーポフ。親友の…あなたじゃないとこんなことは頼めない。だけど…ドルジェを失った私には…、一族の義務を果たす方法は…それしかないんだ」
そう言うと、リューバは僅かに頬を赤らめ、レオニードの黒い瞳から僅かに目を伏せた。

この怜悧で強靭な精神を持ち合わせているとはいえ、まだ13歳のしかも生娘の少女である。この少女がどれだけの想いと覚悟で、その言葉を口にしたのか、それが分からないレオニードではなかった。

「…いいよ。―だけど、お前はそれでいいの?」
目を伏せたリューバに優しく答えたレオニードに、リューバは再び顔を上げ、その幼馴染の主君を見上げる。

「…心は、ドルジェに捧げたから…。私こそ…ごめん、レオニード。誰よりも純粋で高潔なあなたに…こんな事を頼んでしまって…。でも、受けてくれてありがとう。この恩は一生かけて…この家に、ヴェーラさまに尽くして…返すよ」

途切れ途切れに、それでもしっかりとレオニードを見つめて、リューバはそう言うと、レオニードに握手の右手を差し出した。

差し出された幼馴染の右手に、レオニードは握手で返す代わりに、その右手を優しく取ると、白い甲にそっと口づけた。

―レディ・リューバ・ウェイ。私こそ、あなたの純潔をしかと受け取った。必ずや、あなたに…ウェイ家に強い世継ぎを授けよう。
作品名:53 レディ・リューバ 作家名:orangelatte