55 取引
一か月後―
リューバ・ウェイは元の主、ヴェーラ・ユスーポヴァの元へと復帰した。
「リューバ、お帰りなさい。―ご苦労様」
ヴェーラが彼女を労った。
「お心遣い、痛み入ります。只今戻りました。―サーニャはどうでしたか?」
「とてもよく働いてくれたわ。寡黙だけれどとてもよく行き届いた娘でした。さすがウェイ一族ね」
「ありがたきお言葉―」
「リューバ…あの…」
ヴェーラが最も聞きたがっていた―、幼友達の彼女の件について、リューバが主に報告する。
「皇后さまは―、彼女を厚遇してくださる事をお約束下さいました。…それから必ずや近いうちに恩赦を下さることも…」
― シベリアは確かに苛酷な土地ですが…これで少なくとも一般の政治犯のような酷い扱いを受けるという事は避けられると思います。シベリアの女子収容所の所長をしている者が私の遠縁におりますゆえ、その収容所に彼女を移送させることもお約束下さいました。その者には私からも話しておきましょう。
作品名:55 取引 作家名:orangelatte