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愛よりも恋よりも深く  2

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 たった一人だけを愛し、たった一人と共に生きていく。
 そんな理想が通る世の中だったら、愛情の縺れで殺人なんか起きていない。
「なぁ、服部。岬さんは、裏切られた事に対してショックを受けたってのもあるけど、自分の間違った愛情の所為で誰かを殺してしまった事を悔やんでんじゃねーかな。しかも、それがたった一人の身内なら尚更罪の意識は重くなる…」
「まあ、仲が良ぉなかった言うても身内には変わりあらへんからな。それに、片瀬さんに対しての罪悪感もプラスされるやろうし」
「…そうだな。岬さんは好きな相手に殺人という罪を犯させちまった。片瀬さんの人生に傷をつけた事を……これからも悔やみ続けるかもしれねーな」
 一人の人生を狂わせた罪。それが岬をこれかも苦しめ続けるだろう。
「せやけど、村澤さんが助けてくれるやろ。あの人ほんまにあの人の事大切に想っとったし。…なあ、工藤。人は幸せになれる生きもんやって俺思とんねん。辛くてもしんどくても、最後には絶対に幸せが待っとるってな」
 もちろん、その幸福は個人個人違うものだと、服部が続ける。
「綺麗事言ってんじゃねーよ。そんな理想論が通るわけねーだろ…」
 マイナス思考の自分にはない、平次のポジティブな考え。
「持論として言うのはかまへんと思うねんけど」
「勝手に言ってろ。けど、俺は認めねぇからな」
 幸せになれるというのなら、どうして幸せを掴む前に人は挫折したり命を落としたりするんだろうか。
「理想論でも持ってへんとやってられん世の中やからな。裏を返せば、幸せになる為に人は頑張れるっちゅー事や。やから、あの人は大丈夫やで、工藤」
 きっと幸せを掴める。
 平次の腕がそっと伸ばされ、新一の頭を優しく撫でていく。慰めるかの様な動きに、自分が無意識のうちに岬の感情に引きずられていた事に気づいた。
 幸せになれない……どうしようもない。
 そう思っていたのは岬であり、新一はそれに同調してしまっていた。
 きっと、あの瞳を見た瞬間に囚われていたのかもしれない。
 好きだから、自分の所為で不幸にしたくない。愛しているから…幸せになれないと頑なに閉ざした心。
 それは、全部自分が勝手に決めつけているだけのもの……。
「……」
「ほんま、頭硬いで自分。もっと柔軟な心でいかな」
「…うっせーよ」
「まあ、そんな素直やない所もお前らしゅうてええけどな。物わかりのいい工藤なんて気色悪いし」
「…喧嘩売ってるのか……?」
 にっと笑われて、少しだけムッとすれば、あっさりと「堪忍な」と謝られた。
「けど、俺には素直な感情ぶつけろや。辛いとかしんどいとか、全部吐き出したらええから」
 一人で悩まんとけと、もう一度しっかりと平次が告げる。相変わらず太陽みたいに眩しい笑顔を顔に浮かべ、冷えた新一の心をあたためてくれる。
「…分かった。でも、負担になる様だったらちゃんと言えよ」
 重荷にだけはなりたくない。頼ってばかりいたら、きっと対等じゃいられなくなるから。
「分かっとる。けど、工藤の我が儘満開の想い受け止められるん、俺しかおらんて自信あんねんぞ」
「……勝手に言ってろ」
「ああ、勝手に言わせてもらうわ」
 新一は呆れ半分、恥ずかしさ半分といった想いを抱きながら、平次を置いてさっさと歩き出す。すぐに「ちょぉ、待てや…っ」なんて慌てて平次が追いかけてきた。
 きっと平次は自分が背中を向けて離れていっても、こんな風に追いかけてくれるんだろう。
 そう考えると、口元が自然と綻んでくる。
「なんか、腹減ったから帰り食べて帰ろうぜ」
 新一は振り返ると、平次に笑いかけていった。