永遠にともに〈グリプス編〉4
「わぁ!」
その衝撃でアムロが百式のマニュピレーターから滑り落ち、船上に倒れる。
「アムロ!!」
《カミーユ!!騙したの?》
フォウが叫ぶ。
《違う!!人質になった仲間を助けたいんだ!》
《うるさい!!もう誰も信じない!!》
フォウはMK–Ⅱにビームを放つ。そして、百式に向かい、多重メガ粒子砲を放ち、攻撃を仕掛ける。
「シャア!!!」
サイコガンダムの猛烈な攻撃に百式が苦戦する。
「くっ!躱すのが精一杯とは我ながら情けない!」
シャアは百式のフライト・ユニット性能をフル活用して攻撃をギリギリで躱す。
『不味い!このままじゃシャアがやられる!!さっき、あのナミカーという研究員はオレがあのパイロットからサイコガンダムの制御権を奪えると言っていたな。サイコミュ搭載の機体ならば頭の中のバイオセンサーを通して乗っ取れるか!?』
アムロは精神を集中させ、サイコガンダムの制御システムを探る。
すると、アムロの脳裏にサイコガンダムのコックピットに座るパイロットの少女が映る。
『あの少女…、強化人間か!?酷く不安定だ。これならばいける!!』
アムロはサイコガンダムに向けて激しいプレッシャーをかける。
《何だ!この凄まじいプレッシャーは!!押し潰される!!》
サイコガンダムからフォウの悲鳴が聞こえる。
《フォウ!?どうしたんだ!!》
カミーユが叫ぶが、フォウは混乱して泣き叫ぶ事しか出来ない。
《カミーユ!助けて!潰される!!》
《フォウ!!》
アムロの体から青い光が放たれる。その光はアムロの全身を覆い、そしてサイコガンダムへと伸びていく。
《きゃああああ》
青い光に包まれたサイコガンダムの中でフォウが叫ぶ!!
《サイコガンダムの制御が出来ない!!他の誰かが私の中に入ってくる!!!カミーユ!助けて!!!》
フォウは絶叫すると、そのまま意識を失った。
『よし!制御を奪えた!!』
アムロはサイコガンダムの砲撃を抑えると、続けてサイコガンダムの稼働を止める為、意識を集中させる。しかし、アムロはサイコガンダムに意識を集中するあまり、周りの状況を把握できていなかった。
後ろから近付くナミカーに腕を掴まれ、腕に何かを注射される。
「あっ」
アムロは腕に痛みを感じた途端、意識が朦朧とする。
「シャ…ア…」
目の前に見える百式に手を伸ばす。
「アムロ!!」
アムロの意識が薄れるのを感じたシャアが叫ぶ。
アムロの元に向かう百式に、スードリからの砲撃が襲いかかる。
そして、スードリからモビルスーツ隊もアウドムラに向けて出撃して来た。
「くっ!アムロ!!」
目の前に見えるアムロに手が届かない。
もどかしさにクワトロの腕が震える。
《クワトロ大尉!!一旦撤退して体制を整えます!!》
ハヤトから通信が入る。
《しかし!まだアムロを救出できていない!》
尚もアムロの元に向かおうとする百式を、アポリーとロベルトのリックディアスが両側から取り押さえる。
《離せ!アポリー!ロベルト!アムロが!!》
《大尉!!蜂の巣になりたいんですか!!俺たちだってアムロを助けたい!!でも、俺たちにとっては大尉も大切なんです!ここは一旦引いて下さい!!生きていればチャンスはあります!!》
アポリーの叫びにシャアが唇を噛む。
「くっ…」
《…分かった。すまない》
シャアはアポリー達と共にアウドムラへと撤退する。
『アムロ!!!必ず助ける!それまで無事で!!』
シャアはもう一度アムロの方を振り返ると、操縦桿を握る腕に力を込めた。
操縦者を失ったサイコガンダムはオートパイロットに切り替わり、スードリへと帰艦する。そして、アムロを乗せた船もスードリへと向かって行った。
ーーーー日本 ムラサメ研究所
「そうか、わかった。良くやったな、ナミカー君。では、こちらでも受け入れの準備を進めておこう。」
ホンコンシティのナミカーからの連絡を受け、ムラサメ博士はニヤリと笑みを浮かべる。
「ムラサメ博士。何か良いことでもあったんですか?」
コツコツと踵を鳴らして男が近付く。
「パプティマス・シロッコ大佐…。」
木製船団ジュピトリスから単身地球に降下してきた男は、ニュータイプ研究所の所長、ムラサメ博士の元を訪れていた。
「なに、行方不明だった検体が見つかったのだよ。」
「検体?」
「ああ、検体ナンバー001、ここの強化人間達のオリジナル。ファーストニュータイプのアムロ・レイだよ。君も名前くらいは聞いたことがあるだろう?」
「ほう…。アムロ…・レイですか。」
シロッコはニヤリと笑みを浮かべた。
「それは、それは、楽しみですね。」
to be continued.
作品名:永遠にともに〈グリプス編〉4 作家名:koyuho