69 エデンの庭
「ねえ、アレクセイ」
「ん?なんだ?」
ベッドの中でアレクセイの腕枕に頭を預けていたユリウスが夫に語りかける。
「ぼくね…。この頭を誇らしく思う事にした。この頭は…僕の勇敢な決断と行動の証だから…。ぼくがあの時に運命の全てを賭けてあそこを脱出していなかったら…恐らく僕の運命は…ううん、ミハイロフ家の運命は、今と全然違ったものになっていたと思う。ぼくは…髪と引き換えに…運命との賭けに勝ったんだ。だから、この頭はぼくの勇気の証だから…。そう思うとこの頭も…悪くないどころか何だかとても愛おしく思えてきたの。元の通りに伸びるまでには、もう少し時間がかかると思うけど…ね。それまで、こんな頭でもがまんしてくれるかな?」
上目づかいでアレクセイの事を見上げて、訥々と気持ちを語るユリウスの頭をアレクセイはクシャクシャと乱暴にかき回す。
「ばかたれ!誰が我慢…なんだよ。俺は長くても短くてもお前の金の頭が…いや、お前の全てが大好きなんだ!再会した時言ったろ?天使みたいだって!俺は長い金髪によだれを垂らして色めき立つどっかの誰かとは違うんだよ!」
― わかったか?
そう言い放つとアレクセイはクシャクシャに撫でまわしたユリウスの頭を胸にギュッと抱きしめた。
作品名:69 エデンの庭 作家名:orangelatte