70 ~Requiem 1917年9月1日
1917年9月1日―。
首都ペトログラードはコルニーロフ将軍の軍事クーデター未遂で騒乱の渦のさ中にあった。
コルニーロフの軍事独裁政権阻止に働いたケレンスキー率いる臨時政府が、「昨日の敵は今日の味方」とばかりに弾圧を加えたボリシェビキと組み、逮捕されていたボリシェビキ党員は再びソヴィエトに迎え入れられ、結果コルニーロフのクーデター計画は潰され敗北し、逮捕を待つ身となった。
コルニーロフと志を同じくして、そのクーデターに加担したレオニード・ユスーポフ候は、その報せに、いよいよ己の天命…そしてロシア帝国の天命尽きたことを悟った。
― この国は…間もなく世界にも類を見ない新しい形の国として産声を上げるのだろう…。我々の屍を礎として…。
己の身の始末の覚悟は出来ている。あとは―、今まで自分の分身としてこの家のために尽くしてくれたわが妹―、ヴェーラを安全な地へ逃し、そして―。
レオニードにはあと一つだけ―、この生涯を終える前にあと一つだけ、一人の男、レオニード・ユスーポフとして、どうしてもやっておきたいことがあった。
首都ペトログラードはコルニーロフ将軍の軍事クーデター未遂で騒乱の渦のさ中にあった。
コルニーロフの軍事独裁政権阻止に働いたケレンスキー率いる臨時政府が、「昨日の敵は今日の味方」とばかりに弾圧を加えたボリシェビキと組み、逮捕されていたボリシェビキ党員は再びソヴィエトに迎え入れられ、結果コルニーロフのクーデター計画は潰され敗北し、逮捕を待つ身となった。
コルニーロフと志を同じくして、そのクーデターに加担したレオニード・ユスーポフ候は、その報せに、いよいよ己の天命…そしてロシア帝国の天命尽きたことを悟った。
― この国は…間もなく世界にも類を見ない新しい形の国として産声を上げるのだろう…。我々の屍を礎として…。
己の身の始末の覚悟は出来ている。あとは―、今まで自分の分身としてこの家のために尽くしてくれたわが妹―、ヴェーラを安全な地へ逃し、そして―。
レオニードにはあと一つだけ―、この生涯を終える前にあと一つだけ、一人の男、レオニード・ユスーポフとして、どうしてもやっておきたいことがあった。
作品名:70 ~Requiem 1917年9月1日 作家名:orangelatte